研究課題
ディフェンシンは、唾液や口腔においても防御機構が報告されている。本研究では、口腔レンサ球菌のヒトベータディフェンシン2(hBD-2)低感受性のメカニズムを分子生物学的手法を用いて解明し、なぜヒト口腔にレンサ球菌が優位に常在できるかを新たな視点から解明することを目的とする。平成24年度は、口腔レンサ球菌であるStreptococcus mutans(S. mutans)、Streptococcus anginosus (S. anginosus)を対象とし、hBD-2に対する耐性の有無およびそれぞれの被験菌がhBD-2を分解できるかどうか検討を行った。その結果、S. mutansとS. anginosusはhBD-2に対する抵抗性の異なるメカニズムが存在する可能性が示唆された。その結果を受け、平成25年度は、S. mutans UA159株を用い、dlt欠失株を作製した。dlt遺伝子は、細菌の細胞膜表面の電気的チャージをプラスに傾かせることにより、hBD-2が細胞膜表面に付着し、細胞膜にポア形成することを阻止し、hBD-2に対する抵抗性を発揮するとされている。そこで、今回作製したdlt遺伝子欠損株を用いて、hBD-2に対する感受性試験を行った。wild株に比べ、濃度依存的にやや感受性が高まる傾向が認められた。以上のことから、S. mutansはhBD-2に対する耐性を獲得しており、その機能の一部をdlt遺伝子の細胞膜電位の陽チャージ転換が担っている可能性が示された。また、細胞膜の変異があるため、う蝕にかかわる付着性についての変化があると考え、上記2株の付着性試験を実施した。その結果、wild株に比べ、水溶性グルカンが多く、強付着非水溶性グルカンが少ないことが示された。このことから、dlt遺伝子は、S. mutansにおいて歯面付着というう蝕原性を発揮するための第1段階に大きく関与している可能性が示唆された。
すべて 2013
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