研究課題/領域番号 |
24792371
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
岡田 彩子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (60515584)
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キーワード | 次亜塩素酸電解水 / 細胞毒性 |
研究概要 |
口腔領域は、多くの細菌種が存在しているため、常に感染のリスクが懸念される。そのため口腔領域の再生医療成功の鍵は、細菌やバイオフィルムの制御であるとされる。すなわち細菌やバイオフィルムを制御する一方で、軟組織への影響を考慮し、さらに分化を妨げない歯科技術が必要である。バイオフィルム制御に関して、抗菌剤や消毒剤などの化学療法剤が主流であるが、我々はこれまでに機能水のバイオフィルム制御作用の可能性を見出した。機能水は、一般的に分解性が高く、残留性が殆ど無いため安全性が示唆されている。そのため再生医療への応用にも期待でき、本研究課題においてその可能性を検証している。 25年度は、機能水の細胞毒性を検証した。機能水として次亜塩素酸電解水及び対照群として3% 過酸化水素水を準備し、KB細胞に作用させた。尚、次亜塩素酸電解水は、24年度で使用した無隔膜電解槽で電解した次亜塩素酸電解水に加えて、3室ダブルイン型電解槽で電解した次亜塩素酸電解水を用いた。作用後は、酵素活性試験及びLIVE/DEAD Viability Kitを用いた蛍光顕微鏡による生死判定試験を行った。酵素活性試験の結果、2種類の次亜塩素酸電解水の吸光度は、3% 過酸化水素水と比較して高かった。また生死判定試験の結果に関しても、2種類の次亜塩素酸電解水群の死細胞の割合は、3% 過酸化水素水と比較して著しく少なかった。2種類の次亜塩素酸電解水間で比較した場合、有効塩素濃度が一致しているにも関わらず、3室ダブルイン型電解槽で電解した次亜塩素酸電解水の細胞毒性は低かった。2種間で原材料及び製造方法などが異なるため、生成された次亜塩素酸電解水のpH、有効塩素の成分比率、食塩など不純物の割合或いは有効塩素の安定性などに差が生じたためと考えられた。今後は、口腔領域の再生医療に使用するために、さらなる検証が必要であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、次亜塩素酸電解水のKB細胞に及ぼす影響に関して検証を行った。この研究により、細胞培養系及び機能水の細胞毒性試験系の確立を達成することができ、様々な機能水を検証することができた。さらに、本研究で得られた成果は、長野県松本市で行われた第62回口腔衛生学会・総会及び秋田で行われた第139回日本歯科保存学会2013年度秋季学術大会にて発表するに至った。機能水の歯科応用に期待が寄せられている一方で、他の抗菌剤や消毒剤などの化学療法剤と比較して、科学的検証を行った報告が少ないため、本研究は高い評価を得ることができ、達成度としてはおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、次亜塩素酸電解水のKB細胞に及ぼす影響に関して検証を行った結果、すでに臨床応用されている3% 過酸化水素水の傷害性と比較した結果、懸念されるほどの傷害性を示さなかった。特に、3室ダブルイン型電解槽で電解した次亜塩素酸電解水の細胞毒性は著しく低く、その殺菌や再生医療に関わる様々な細胞に及ぼす機序を詳細に検証することで、再生医療に応用するために適した機能水の条件や、作用方法が解明されることが期待される。 また、iPS細胞に関しては、口腔領域の再生医療に関わる様々な細胞で十分に検討した上で、順次実験を開始していきたい。
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