研究課題
口腔領域は、多くの細菌種が存在しているため、常に感染のリスクが懸念される。そのため口腔領域の再生医療成功の鍵は、細菌やバイオフィルムの制御であるとされる。すなわち細菌やバイオフィルムを制御する一方で、軟組織への影響を考慮し、さらに分化を妨げない歯科技術が必要である。機能水の1種である次亜塩素酸電解水は、強い殺菌性を示す一方で、食塩水を原料とする電解水であることから安全性が期待されている。したがって、次亜塩素酸電解水は、再生医療への応用にも期待できるため、本研究課題においてその可能性を検証した。24および25年度の2年間の実験で、口腔内で使用するにあたり1) 短時間で殺菌効果を発揮、2) バイオフィルム浸透殺菌効果を有するおよび3) 硬軟組織への影響が僅かである次亜塩素酸電解水を選択した。26年度は、2年間で得た結果をもとに3室ダブルイン型電解槽で生成した次亜塩素酸電解水を選択し、細胞毒性試験を行った。対照群として3%過酸化水素水を用いた。これらの供試溶液をKB細胞に作用した後、LIVE/DEAD Viability Kitを用いた蛍光顕微鏡による生死判定試験を行った。蛍光顕微鏡観察した結果、3%過酸化水素水における死細胞の多くは、次亜塩素酸電解水と比較して扁平形態が失われ、培養プレ-トから剥離していることを確認した。そこで細胞接着分子へ及ぼす影響に差が生じていることが考えられるため、細胞接着分子の1つであるE-カドヘリンの抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った。その結果、E-カドヘリンの発現は、3室ダブルイン型電解槽で生成した群では発現が多く見られたが、3%過酸化水素水群では僅かであった。以上より、3室ダブルイン型電解槽で生成した次亜塩素酸電解水のKB細胞におけるE-カドヘリンへの損傷の程度は、臨床で用いる3%過酸化水素水と比較して小さいことがわかった。
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Asian Pacific Journal of Dentistry
巻: 15 ページ: 3-11