研究課題/領域番号 |
24792375
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
牧野 路子 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (50550729)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 疾患調査 / 服薬調査 |
研究概要 |
平成20年度の患者調査によると,歯科診療所の患者の約34%は高齢者であった.多くの高齢者は基礎疾患を保有するが,歯科受診する高齢者はどのような基礎疾患を保有するか把握できていない.より安全な歯科治療を行う上で,高齢者の基礎疾患を把握は急務である.本研究では,歯科受診する高齢者の基礎疾患と服用薬剤を調査し,多くみられる基礎疾患を明らかにすることを目的とした.さらに,歯科治療時おける基礎疾患別のガイドラインの作成,医歯薬連携をよりスムーズにするための「疾病手帳」の開発を目指すことを目的とした. 平成24年度は福岡歯科大学附属病院を歯科治療で受診する高齢者を対象に保有する基礎疾患と服用薬剤について調査を行い,大学附属病院を受診する高齢者の基礎疾患と服用薬剤の傾向を把握することを目的に調査を行った.予備調査として45日間,大学附属病院を受診する高齢者を対象に調査を行った.被験者は男性64名(43.2%),女性84名(56.8%)の148名であった.平均年齢75歳であった.被験者の91%に1つ以上の疾患の保有を認めた.平均疾患数は2.0であった.被験者の62.2%が1日に少なくとも1つ以上の薬剤を服用していた.平均服薬数は3.3であった.疾患保有者の割合は年齢階層が上がると増加する傾向を示した.薬剤服用者の割合についても年齢階層が上がるとともに薬剤服用者の割合も増加していた.これらの結果を参考に調査方法の簡便化を図るために簡易調査シートを開発した.この簡易調査シートを用いて次年度からの大規模調査を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福岡歯科大学附属病院を歯科治療で受診する65歳以上の高齢者を対象に45日間,予備調査をした.診療録の診療情報を参考に,年齢,性別,全身的既往歴,服用薬剤について調査を行った.診療録の初診時問診票やお薬手帳等を参考に保有する基礎疾患と服用薬剤について調査した.疾患はWHOの国際疾病分類であるICD-10分類を,薬剤は薬効分類番号を用いて,類別を行った.いずれも福岡歯科大学倫理委員会の承認を得て実施した.被験者は男性64名(43.2%),女性84名(56.8%)の148名であった.平均年齢75歳であった.被験者の91%に1つ以上の疾患の保有を認めた.平均疾患数は2.0であった.高血圧性疾患(37.8%),糖尿病(12.8%)の順に多かった.被験者の62.2%が1日に少なくとも1つ以上の薬剤を服用していた.平均服薬数は3.3であり,服薬数の幅は0から14であった.血圧降下剤を含む循環器官用剤の服用が最も多く,全体の約40%だった.65歳以上75歳未満を前期高齢者,75歳以上を後期高齢者として年齢階層別に解析を行った.疾患保有者の割合について後期高齢者と前期高齢者をカイ二乗検定したところ,疾患保有者の割合は年齢階層が上がると増加する傾向を示した.薬剤服用者の割合についても同様の分析を行ったところ,統計学的に有意な差を認めなかったが,年齢階層が上がるとともに薬剤服用者の割合も増加していた.抗血栓薬と消化性潰瘍用剤の服用の有無に有意な関連を認めた.大学附属病院における高齢者の基礎疾患,薬剤の服用傾向を把握することができた.これらの結果を参考に調査方法の簡便化を図るために簡易調査シートを開発した.これにより,調査項目の記入を短時間でより簡便に行うことが可能となる.この簡易調査シートを用いて次年度からの大規模調査を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
大学附属病院における予備調査を参考にして,大規模調査を行う予定である.予備調査において,基礎疾患の保有頻度の高かった上位10疾患(高血圧性疾患,糖尿病,脳血管疾患,骨粗鬆症などを含む骨傷害及び軟骨障害,虚血性心疾患,代謝障害,関節障害,その他の心疾患,ウイルス性肝炎,悪性新生物,器質性精神障害,甲状腺障害)の保有頻度を調査する予定である.同時に,薬効分類を用いて服用薬剤の調査を行う予定である.年齢階層が上がるにつれ,基礎疾患の保有率,薬剤の服用率がどのように変化するかを検討する.さらに,抗血栓薬と消化性潰瘍用剤の関連を検討する. 大規模調査を行うにあたり,調査協力施設を選定する.調査協力施設は一般歯科医院における基礎疾患および服用薬剤の調査を目的とするため,一般歯科医院を対象とする.協力の得られる施設に,予備調査を参考に前年度に開発した簡易調査シートを配布し,3ヶ月間調査を行う予定である.簡易調査シートは調査項目の記入を短時間で簡便に行うこと,管理方法を簡便にするために,タブレット端末で動作するよう開発した.各調査協力施設に簡易調査シートをインストールしたタブレット端末を配布する.調査開始前に協力施設に対して,簡易調査シートの使用方法などの講習会を行い,さらに調査開始後は1ヶ月ごとに調査状況の把握のためにWebを用いて会議を行う予定である. 同時に,大学附属病院でも同様の基礎疾患および服薬調査を行う予定である.大学附属病院と一般歯科医院に通院する高齢者の基礎疾患,服用薬剤の傾向をそれぞれ把握し,また比較検討する予定である. これより,歯科治療における基礎疾患ガイドラインの作成,医歯薬連携をスムーズにするための「疾病手帳」の開発を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
大規模調査を行うにあたり,調査協力施設を選定する.調査協力施設は一般歯科医院における基礎疾患および服用薬剤の調査を目的とするため,一般歯科医院を対象とする.協力施設の募集および調査説明を行うための説明会を行う予定である.協力の得られる施設に,予備調査を参考に前年度に開発した簡易調査シートをインストールしたタブレット端末を配布する予定である.協力施設は約10~20施設を予定しているため,各施設にタブレット端末を配布するので,協力施設分のタブレット端末が必要である. 調査開始前に協力施設に対して,簡易調査シートの使用方法などの講習会を行う予定である.調査期間は3ヶ月間を予定しているが,調査開始後は1ヶ月ごとに調査状況の把握のためにWebを用いて会議を行う予定である.Web会議で調査状況を把握する予定であるが,協力施設への訪問調査も行う予定である.調査終了後は各協力施設からタブレット端末を郵送により回収を行い,解析を行う予定である. 解析終了後は国内外での学会発表や、論文化を進める予定である.
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