多くの高齢者は基礎疾患をもち、それに伴い薬剤を服用している。しかしながら、どのような疾患を多く保有し、どのような薬剤を多く服用しているか把握できていない。そこで、外来受診高齢者に多くみられる疾患および薬剤を明らかにすることを目的として、調査を行った。 対象は当病院高齢者歯科外来においてに受診した65歳以上の患者とした。診療録の診療情報を参考に、年齢、性別、全身的既往歴、服用薬剤、治療内容について調査を行った。疾患はICD-10分類を、薬剤は薬効分類を用いて、類別を行った。 対象の8割以上に1つ以上の疾患の保有と薬剤の服用を認めた。ICD-10分類による疾患調査では高血圧性疾患、糖尿病、脳血管疾患の順に多く、平均疾患数は2.0であった。これらの患者の平均服薬数は3.3であり、血圧降下剤を含む循環器官用剤の服用が最も多く、全体の約40%だった。また消化性潰瘍薬は消化器系疾患が少ない割に服薬率は高かった。「お薬手帳」を確認できた42名を対象に抗血栓薬と消化性潰瘍薬について調べたところ、カイ2乗検定で有意差(p<0.01)が認められた。また抗血栓薬服用患者の消化性潰瘍薬服用のオッズ比は8.5であった。抗血栓薬の代表であるアスピリンには、副作用として胃腸障害をもつため、これに対して消化性潰瘍薬が投薬された結果と考えられる。高齢者の歯科診療において、頻発する疾患と服薬についての十分な理解が必要であることが示唆された。
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