研究課題/領域番号 |
24792381
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
椿 祥子 千葉大学, 看護学研究科, 助教 (10604861)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 看護理論 / 障害児看護 / 看護の専門性 |
研究概要 |
本研究の目的は、看護の大理論を適用し、障害児療育支援における看護の専門性を解明することである。現在、オレム看護理論、ロイ看護理論、キング看護理論、ローパー・ローガン・ティアニー看護理論、ロジャーズ看護理論について収集した。理論の概要の分析は以下の通りである。 オレム看護理論は、人間はセルフケアエージェンシーのある存在であり、治療的セルフケアデマンドがセルフケアエージェンシーを上回りセルフケアが自力でできないときに、看護が必要となると述べていた。これは、人間はもともと持てる力があるということと、その人が自分でセルフケアをしていけるように関わることが看護であると、看護の目的を明快にした点が特徴である。ロイ看護理論は、人間をシステムと位置付けて、人間の行動にはそれを引き起こす刺激があり、その刺激が人間のシステムを介した結果が行動として表れているとし、看護はその刺激のコントロールであると述べた。これは、その時々の患者の今だけを見るのではなく、時の流れとの関係で見るという視点に特徴があると考えられる。ロジャーズ看護理論は、人間をユニタリ・ヒューマン・ビーイングズと表現し、統一体としてみるという見方を初めて世に示した。物理学に基づき、環境と相互作用しながら、その人なりのパターンを形成しているとし、看護はそのパターンを認識し、環境との相互作用を助けていくことと述べていた。これは、人間と統一体として見る見方を初めて世に示した点が特徴であるといえる。 それぞれの、理論は、その理論の人間観に基づき、看護の目的が定められ、その目的を達成するための方法論が述べられていた。つまり、看護の枠組みとして取り出すときに、方法だけを取り出しては理論家の述べた理論の適用にはならず、人間観や目的論とともに適用する必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在、看護の大理論の訳本と原本を収集し、それぞれの理論書から看護の概念枠組みを構成する要素を抽出している段階である。数冊の理論書の分析から、理論を適用するときには、その理論の方法論だけでなく、対象論や目的論とともに適用することが必要であることがわかった。本研究は、複数の理論を統合して、看護の概念枠組みを構成する計画であるが、対象論と目的論が異なる理論の方法論のみを適用するのでは、誤った適用になってしまうことがわかったため、統合の方法を検討する必要が出てきた。そのため、スムーズに統合ができずに遅れている。今後は引き続き、残りの理論の概要の分析をすると同時に、統合の方法を検討し、障害児看護の概念枠組みの構成に取り組んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずは、収集した残りの複数の看護の理論書の分析と既存の障害児看護の事例報告への適用を行なう。同時にそれらの統合の方法の検討し、複数の理論の統合により障害児看護の理論枠組みを導き出す。そして、導き出された理論枠組みを実際の療育の場にいる障害児の複数例に適用し、理論看護学や障害児療育の専門家との会議で検討することにより、理論枠組みの妥当性・信頼性を検討し、障害児看護の理論枠組みを構築する。 次に、構築された障害児看護の理論枠組みを障害児療育の場にいる障害児に適用して、看護の必要性を明らかにする。同時に、対象児に関わっている看護師以外の療育支援者の児の捉え方や関わりの方向性について情報収集し、その特徴を明らかにする。そして、理論枠組みを適用して明らかになった看護の必要性と看護師以外の療育支援者の捉え方の特徴を比較検討して、看護独自の障害児の捉え方や関わりの方向性を見出すことにより、障害児療育支援における看護の専門性を明らかにする。 そして、その成果を国際学会・国内学会にて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、まずは、文献検討による障害児看護の理論枠組みの構築を行なう。理論枠組みの信頼性・妥当性を確保するために専門家会議を行なうための書類作成や会議費用として使用する。また、文献検討にて構築した理論枠組みを、実際の療育の場にいる障害児に適用するため、療育の場へ情報収集するための交通費として使用する。構築された障害児看護の理論枠組みについて、国内学会で発表するために学会参加費用、旅費として使用する。 構築された障害児看護の理論枠組みを適用して、実際の療育の場にいる障害児の看護の専門性を明らかにし、その後、看護師以外の療育支援者の捉え方や関わりの方向性について情報収集する。その際に、関わりを観察するためのビデオカメラと三脚、ICレコーダーの購入をする。また、情報収集する施設までの交通費として使用する。
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