研究課題/領域番号 |
24792383
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
児玉 有子 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (70336121)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 東日本大震災 / 災害看護 / 原子力発電所事故 |
研究概要 |
本研究の目的は①南相馬市立総合病院に震災により受傷者外来受診や入院した患者の背景と転帰と、それらの患者に提供した看護や医療の実態を明らかにすること、および②看護師の震災前後および原発事故発生前後の勤務継続に影響した因子を明らかにすることである。 平成24年度はインタビュー研究を予定していたが、インタビュー調査の対象者が置かれていた状況を把握することを優先しまず、患者の背景および転帰、実施された看護について診療録や看護記録や病棟管理日誌からデータ収集した。研究対象期間は震災発生日の2011年3月11日から入院患者の搬送が完了した20日とした。 期間中の外来受診者は659人、疾患の内訳は震災による負傷37人、慢性疾患596人、かぜ症候群22人、震災に関連しない外傷4人だった。被曝のために受診したものはいなかった。地震発生時の入院患者は197人。地震後の新規入院は44名。転帰は133人が退院し、93人は他施設へ搬送、5人が死亡退院だった。 震災以降、薬剤、食料等物資の供給は途絶えた。震災前勤務していた239人の病院スタッフは71人に減った。支援に駆けつけたDMATは15日に撤退し、その後の支援は自衛隊のみだった。 原子力発電所後の病院は、外部からの人的、物的支援が途絶え、支援は自衛隊に限定される。職員の一部も避難し、人手不足となる。限られた資源内で患者の搬送と慢性疾患を抱える外来患者への対応が求められる。以上より、今後の原子力発電所事故の災害対策では1)被ばく低減策の徹底。2)限られた数の職員で病院機能を維持するための方策。3)一定期間届かない可能性に対応した物資の備蓄等を盛り込むべきである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は①南相馬市立総合病院に震災により受傷者外来受診や入院した患者の背景と転帰と、それらの患者に提供した看護や医療の実態を明らかにすること、および②看護師の震災前後および原発事故発生前後の勤務継続に影響した因子を明らかにすることである。 平成24年度はインタビュー研究を予定していたが、インタビュー調査の対象者が置かれていた状況を把握することを優先しまず、患者の背景および転帰、実施された看護について診療録や看護記録や病棟管理日誌からデータ収集した。これらのデータの分析も終了し、現在論文投稿準備中である。 また、25年度に予定しているインタビュー研究は所属期間の倫理審査を終え、対象者リクルートの準備を開始した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は看護師を対象に震災前後、および原発事故発生前後の勤務継続や離職等自分が取った行動とその理由、判断に至るプロセスでの葛藤についての現地に赴き、聞き取り調査・分析(質的研究)を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の勤務地と調査地域が離れているため、データ収集や分析時の打ち合わせ等に調査地へ出向くための旅費が必要である。 上記のほか、平成25年度はインタビューデータを分析するために必要な録音データの文字起こしにかかる経費、及び研究成果発表にかかる校正費用、学会発表にかかる費用等への使用を予定している。
|