研究概要 |
研究目的は①東日本大震災時の南相馬市立総合病院の外来受診患者や入院患者の背景や転帰および提供した看護や医療の実態を明らかにすること②看護師の震災前後の勤務継続に影響した因子を明らかにすることである。 研究1年目は研究目的①を達成するため、診療録、看護記録、病棟管理日誌等からデータを収集した。研究の成果は現在、論文として投稿中である。 研究2年目は,目的②達成のため、看護師を対象に聞き取り調査を実施した。聞き取り調査は15人に対して行った。看護職としての経験年数は中央値22年(1-36)、年齢中央値44歳(25-57)であった。対象者のうち5人は震災後、一度病院を離れた期間があったが復職し、残りの4人は勤務を継続しており、6人は退職時期に違いがあるが震災後退職していた。 退職には配偶者の職業、自宅の損失がより影響することがわかった。さらに、原子力発電所近郊の病院への復職、再就職を促すには住環境の整備が重要で、年齢は重大な因子ではない可能性が示された。発災後病院を離れる時に、年配看護師や管理職らが「若いのだから、気にしなくていい。避難しなさい」と促したことで「負い目」を感じながらも、職場を離れることを選択したケースもあった。多くの若い看護師は、このような対応に謝意を持ち、その後、「綿密な情報交換の継続」が復職および復職後の人間関係をスムーズにしていた。 震災時在籍し対象となった看護師は124人で、対象者全員に参加を呼びかけたが結果として応じたのは15名だった。震災後2年経過し、話せる様になったという参加者がいる一方で、泣きながら話すものも多かった。これは看護師自身が被災者であり、時間が経過しても困難を伴うことを反映し、このような深刻な問題を扱う研究の遂行には、調査対象である看護師との信頼関係の構築が欠かせない。今回の研究をもとに大規模なアンケート調査での検証を今後予定している。
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