褥瘡発生は圧迫力(圧縮力)、剪断力、低栄養状態などが原因とされており、機械的外力によって骨突出部上の軟部組織血流が遮断された虚血性壊死と考えられている。褥瘡は悪化に伴い、治療における時間、労力、費用いずれも増加する傾向にあるため、予防、早期発見、早期処置が極めて重要となる。しかしながら、個人の圧迫力に対する皮膚耐久性の違いにより、褥瘡は発生したりしなかったりするため、経験の少ない看護師でも客観的に褥瘡発生を判断できる手法が強く要望されている。現在、非侵襲的に皮膚血流の状態を評価できるものにレーザー血流計があるが、機器の大きさや取り扱いの慎重さから、臨床のベッドサイドで使用することは難しい。これらのことから、看護師がベッドサイドで使用できる皮膚血流評価ツールを開発したいと考えた。本研究においては、冷却刺激時の温度応答により皮膚血流量を推定する手法の血流評価ツールとしての妥当性を検証した。本手法は、本研究に先立って開発した円柱座標系における新たな局所皮膚領域生体熱移動解析数理モデルを使用した血液循環評価システムを用いるものである。本研究では、健康高齢者および入院中の長期臥床患者を対象に、褥瘡好発部位における推定血流値を求めた。その結果、健康高齢者に比べ、患者の方が推定血流値は低く、圧迫を受けやすい部位がより低い値を示すことが明らかとなった。本手法による推定血流値と皮膚の虚血状態との関係については、今後さらに検討する必要があることが明らかとなった。
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