これまでに、筋電位多点計測による背部の筋電位トポグラムを作成し、生理学的活動量が反映された画像による行動解析を試みた。身体移動援助のシミュレーションによる活動強度の経時的変化を図示する事により、身体負荷過程の個々の特徴が抽出された。頸肩部症状を自覚する被験者には、運動負荷後に特徴的な電位の増大が認められ、周波数1~3Hzおよび10~15Hz帯域のトポグラム上で鮮明に確認された。これらの筋活動は頸肩部症状のない被験者には観察されなかった。以上の結果から、低周波帯域で電位が増大した筋活動は、頸肩部への動作負荷に伴う特有な筋活動現象であることが示唆された。さらに、筋電位トポグラムを模擬身体上にマッピングしたところこれらの特異的筋活動の位置は、有訴部位と非常に近似していることが確認できた。筋電位トポグラフィは身体活動に伴う筋活動変化を視覚的に捉える事ができ、看護領域における新たな身体活動評価法の可能性を見出すことが出来た。 また、筋電トポグラフィ評価における説明性の向上として、僧帽筋部の皮膚血流量、皮膚表面温度、頸肩部症状の程度の経時的変化を観察した。自覚症状の強度には、動作負荷の条件や経過時間による差が見られた。さらに、個々の動作の詳細について検討し、身体移乗援助の際の対象者との距離および看護師の姿勢の安定性において被験者間での特徴が抽出された。これらの援助動作の特徴から、個々の自覚する頸肩部負荷症状への関連性について示唆を得る事ができた。
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