本研究の目的は、看護系大学の新人教員が実習指導において直面する困難と、それらへの対処の方法を把握し、新人教員の実習指導力向上に必要な支援プログラムを検討することである。 平成26年度は、平成25年度までに得られた研究成果を活用し、新人教員の体験が想起可能な看護系大学の若手教員10名(うち1名は現在は病院勤務)を対象にフォーカス・グループインタビューを実施した。インタビュー内容として①新人教員としての臨地実習指導で体験した困難の内容、②困難への対処方法・活用できた支援の内容、③もっと必要であったと感じる支援や今後必要と考える支援策を設定した。 得られたデータを、意味内容を損なわないようにコード化し、類似性に基づき分類した結果、新人教員が体験する困難の内容の分類として「初めて取組む実習指導のイメージが描けない」「実習指導の進め方がわからない」「学習環境を適切に調整できない」など9つの大分類が得られた。困難への対処方法・活用した支援内容の分類として「実習指導の全般に対する上司からの指導・協力」「身近な同僚・仲間からの助言」「教育に関する知識・技術の学習の場」など5つの大分類が得られた。もっと必要であると考える支援内容の分類として「新人教員の実習指導上の困難性を理解した上での上司の積極的な支援」「実習指導の全体像と具体的活動の双方を把握していくための情報提供と支援」「新人教員の視野の拡大および学生への実習教育充実に向けた教員同士の共有・連携」「新人教員の教育者としての知識・技術の向上を支援する組織的取組み」の4つの大分類が得られた。 以上より、新人教員の実習指導力向上のためには、実習指導を含む大学教員の教育活動の全体像を把握できるための適切な情報提供や、教育者としてのスキルアップのための教員間連携を含んだ支援策の必要性が示唆された。
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