研究課題/領域番号 |
24792400
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
佐野 恵美香 杏林大学, 保健学部, 講師 (10404930)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 採血 / 注射 |
研究概要 |
看護学技術教育における、注射部位についてはその安全性の科学的根拠が問われている。平成24年度は、超音波診断装置を用いて、肘窩における刺入部位の安全領域について明らかにすることを目的に、肘窩の解剖学的検索を行った結果をここに報告する。 研究の実施にあたり、研究者が所属する倫理審査委員会での承認を得た。対象は同意の得られた30名で、未成年者には保護者の承諾を得た上で実施した。平均年齢は、22.9(±7.8)歳で、29名が女性であった。平均身長は、1.58(±0.06)mで、平均体重は50.7(±6.7)kg、平均BMIは20.2(±2.3)であった。 上腕骨の内側上顆と外側上顆を結ぶ、Huter線を基準線とし測定を行った。その結果、上腕静脈と上腕動脈の位置関係が、11の分類に分けられた。内訳は、上腕静脈と上腕動脈が横並びで上腕静脈がより尺側にあるものは、9名と最も多く、次いで、上腕静脈が尺側表層で上腕動脈が上腕静脈に比べやや橈側深部にあるものが4名、上腕静脈が尺側深部で上腕動脈が上腕静脈に比べやや橈側表層にあるものが3名、上腕静脈が上腕動脈より表層に2本走行しほぼ縦並びのものが3名、上腕静脈2本が上腕動脈とほぼ横並びに走行しているものが3名と分類された。上腕二頭筋腱直下と肘窩での走行が変化しているものもいた。 これらの結果から肘窩での採血・注射においては、個別性を考慮したより慎重な血管選定と、視診触診による穿刺前の血管走行の観察が重要であるといえる。 臨床現場において、肘窩での末梢静脈血採血や静脈注射時に超音波診断装置を用いて血管の選定をしている結果は得られず、表層での血管の走行や弾力性等を経験的に選択している実態があった。超音波ガイド下の中心静脈穿刺は普及してきており、末梢静脈血採血や静脈注射時に超音波診断装置を用いることで、より安全で適切な部位への刺入が可能になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画の超音波診断装置を用いた、肘窩における刺入部位の安全領域について、被験者を対象とした研究を遂行し、結果の解析を行っている点ではおおむね順調である。 しかし、平成24年度に計画予定の国外での実態調査に関しては、調整が難航し実施できなかった点が遅れている理由である。 また被験者の偏りが目立つため、統計的処理ができていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
超音波診断装置を用いた、肘窩における刺入部位の安全領域について、被験者を対象とした研究については平成25年度も例数を増やす予定である。また、被験者の男女差についての偏りも解消し、統計的処理を行う。 国外での実態調査については、平成25年度に調整し、実施の予定である。 研究最終年度にあたるため、看護基礎教育への活用の検討と現段階での報告を学術集会等で行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
国外の実態調査については、平成25年度に実施の予定であるため、旅費としての使用を計画する。また超音波診断装置を用いた、肘窩の解剖学的検索の例数を増やすため、謝礼を計上する予定である。研究最終年度となるため、研究のまとめを行うための、画像処理ソフトとして物品費を計画する。
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