研究課題/領域番号 |
24792402
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
笠原 康代 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (00610958)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 危険予測能力 / リスク知覚 / 看護師 / 医療安全 / 安全教育 |
研究概要 |
【目的】本研究は,医療安全教育の一環として,危険予測能力を育成するための教育ツールの開発を目的としている.平成24年度は,危険予測トレーニング用プログラムを開発し,看護師の危険予測能力の特性について検討した. 【内容】 1.危険予測トレーニング用プログラムの開発 平成23年度より取り組んでいたプログラムを用い,平成24年度は看護師を対象に実験を行い,画像やシナリオの妥当性とプログラムの操作性,機能等について検討した.平成25年度はさらなる充実化をはかる. 2.プログラムの臨床応用可能性の評価 看護師の「臨床知」を集結し教育内容に反映していくため,平成24年度はプログラムを用いて看護師を対象に実験を行った.看護師が看護場面で危険と捉える事象,発見までの速さ,予測される事故,対処法を分析した.研究対象者は,看護師41名であった.キャリアレベルの内訳を以下に示す.(1)指導のもと実践できる看護師13名,平均年齢30.0才(SD=6.3),経験年数4.7年 (SD=5.4).(2)1人で実践できる看護師14名,平均年齢32.4才(SD=5.2),経験年数7.3年(SD=3.7).(3)管理的視点を持ちながら指導できる看護師14名,平均年齢39.8才(SD=6.5),経験年数16.9 年(SD=6.4)であった.方法は,iPadと専用ソフトを使用し,看護場面の静止画10場面を各20秒間提示した.参加者には危険と思った箇所をなるべく早くタッチするよう求めた.結果,レベル2の看護師がもっとも多くのハザードを発見していた.指摘箇所と反応時間はレベル間で差はなかった.今年度,看護師の危険予測能力の特性が明確になり,プログラムのさらなる充実化が期待できる.この教育支援が可能になれば,学生や看護師がいつでもトレーニングができ,より高い能力を養うことができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,看護における医療安全教育の一環として,看護学生の危険予測能力を育成するための教育ツールの開発を目的として,平成24~25年の2年間計画で研究を進めている. 平成24年度は,当初の計画通り,危険予測トレーニング用プログラムの作成に取り組み,そのために病棟看護師に対し実験を行った.結果,プログラムの改善点がより明確になり,さらにキャリアレベル間のハザードおよびリスク知覚の特性を明らかにすることができた. 平成25年度の計画である実験2「危険予測トレーニング用プログラムの看護基礎教育における試験的導入と評価(看護学生への介入研究による教育効果の評価と課題の検討)」については,平成24年度の後半から実験を開始している.よって,現在までの達成度としてはおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
■平成25年度の計画 実験2:危険予測トレーニング用プログラムの看護基礎教育における試験的導入と評価(看護学生への介入研究による教育効果の評価と課題の検討)の実施 本実験1の結果を受け,プログラムを用いて介入研究に取り組む.対象者は看護学部生(各学年20名ずつ)計80名を予定している.方法は,まず実験目的の説明と使用方法の確認を行い,刺激画像は「薬剤(注射、内服薬)」「転倒転落」「チューブ・ドレーン管理」「検査」「医療機器」の事故に関連するものをランダムに提示する.事象から予測される事故や対処法について発話してもらい,音声はiPadに自動録音する.分析は,学生の危険予測能力(危険と捉える事象,発見速度,予測される事故,対処法)と注意力に関する調査を実施しデータを取得する.その後,学生にはiPadを2週間貸与し試用をもとめる.2週間後,似た項目を再度測定し,介入前後の傾向を比較検討する.危険と捉える事象.発見速度,注意力のデータに関しては相関性を確認するなど統計的に分析をする.予測される事故や対処法については,音声データを質的に分析し,カテゴリー化し傾向を検討する.プログラムの操作性や機能等に関するヒヤリング調査もあわせて実施し,プログラムの充実化をはかる. ■看護学生の危険予測能力を育成するための教育ツールの提案 以上の研究結果を踏まえ,医療安全教育における学生の危険予測能力を育成するためのiPadを用いた教育ツール導入可能性と今後の課題を明確にし,次世代型の新たな医療安全教育における危険予測トレーニング用の教育ツールとして実用可能性を提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,危険予測トレーニング用プログラムをさらに充実化するために開発の諸経費が必須である.開発にあたっては,既製品を基にした大幅なカスタマイズの作業が必要となり,平成24年度に引き続き,プログラミングエンジニアの専門的な知識提供を受けて開発を進めるための経費が計上されている.研究期間中,プログラムについては①シナリオ提示,②データ記録・保存,③教育・支援ツールの見直しや充実化を予定しており,平成25年度もこれらのプログラミング作業および開発のための必要最低限の経費を予算としてあげている. また,実験を行うためには,データの記録や分析のための諸経費が必要である.実験で取得するデータには音声や動画が含まれるため,これらを記録・保存するための大容量のハードディスクドライブも必要である. 平成25年度の主な研究対象者は,看護学生であり,実験参加を求める上で謝礼を支給することは妥当であると考え,予算に計上している. また,実験用画像は,医療現場で撮影した場面を用いるため,作成に際しては協力施設まで出向く必要がある.その他,研究協力者や協力機関との打ち合わせや学会発表にかかる経費も,研究の継続,遂行のために必要である,予算としては妥当な経費であると考える.
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