【目的】本研究は、看護基礎教育における医療安全教育の一環として、学生の危険予測能力を育成するための教育ツールの開発を目的とした。 【平成24年度】【方法】我々は、専用ソフトを開発し、iPadを用いて実験した。実験参加者は看護師41名と看護学生83名であった。参加者には、薬剤棚に類似したアンプルが並んで保管されているもの等の10場面を提示した。また、危険と思う箇所をなるべく早くタッチするよう求め、指摘箇所を記録した。また、指摘箇所の危険度を5件法で評価してもらった。発見後の対応法に関しても聞き取り調査をした。【結果・考察】いずれの場面も、看護学生の方が看護師より危険箇所を指摘できなかった。危険度の評価は、いずれも看護学生は看護師よりも有意に低く評価した。また、発見後の対応法は両者で相違が見られ、看護学生に教授することでより良い学習ツールになると考えた。 【平成25年度】【方法】対応法に関するアドバイス機能を追加したプログラムを使い実験した。対象は看護学生93名であった。iPadを持ち帰り、2日間学習をしてもらった。iPad回収後、学習効果や使用感等に関する質問紙調査をした。【結果・考察】興味や操作の簡便性、効果等は概ね好評だった。高学年ほど危険箇所を指摘できた人数が多く、それまでの修得内容も反映されていた。自由記述では「紙より良い」「実習前にできてよかった」「場面はもっと多い方が良い」等の意見があった。 本研究より、以下のことが明らかになった。(1)学生は看護師よりもハザードを指摘できず、リスクを低く評価する。(2)発見後の対応法は、看護師と学生で異なる場合がある。(3)本プログラムを使用することで、より良い教育効果が得られる可能性がある。 今後は、両者の特性をもとにフィードバック機能を充実させ、場面設定を増やし、系統的に学習できるよう設計を再考し、効果検証に取り組んでいく。
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