研究実績の概要 |
昨今,地域で暮らす高齢の高次脳機能障害者や脳卒中による嚥下障害としての大脳に病変のある仮性球麻痺の人が増加し,このなかには食事や口腔ケア時に,口を開けてくれない開口障害を有する症例が多く認められる。こうした場合,舌圧子や指などで,臼歯後三角最後部内側付近の粘膜を軽く刺激して開口を誘発させることが行われている。しかし,口腔後方部への粘膜刺激が有効なときと無効な場合があり,この開口反射が生じる具体的なメカニズムは未だ明らかにされていない。そこで開口・嚥下運動を誘発する臼歯後三角最後部内側における末梢神経レベルでの解明結果を看護に応用することが,画一的になりがちな摂食・嚥下機能訓練法においてエビデンスに基づいた手順の開発につながる。日本の嚥下リハビリテーションの流れを顧みると,誤嚥防止や安全性,有用性に焦点が当てられてきたが,実践方法に関しては課題が残っている。例えば,QOLを重視した嚥下治療や看護ケアの方向性を見出し,いかに嚥下リハビリテーションに訓練原則を取り入れるべきか,等である。臨床では,食事や口腔ケア時に,口を開けてくれない開口障害を有する症例が多く認められる。そこで,看護形態学的視点から開口反射刺激法(K-point刺激)の根拠を解明することが目的である。開口が困難な偽性球麻痺患者に対して,開口反射を誘発する部位が口腔内にある。この刺激点は,口蓋舌弓と翼突下顎ヒダの中間にあり,臼後隆起の内側方に位置する。所見から知覚刺激による嚥下訓練を行うには,過負荷の原則,特異性の原則,可塑性の原理を考慮しなければならない。運動機能を発現させるためには知覚入力が大切であり,看護実践としては,形態学的なエビデンスに基づいた上記の訓練項目を随時実施することにより,低下した嚥下機能を賦活できると考える。
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