本研究の目的は、がん患者の呼吸困難感による多側面に及ぶ影響を包括的な視点でとらえ、呼吸困難感によりどのような影響がどの程度生じているのかというインパクトについて評価するための評価尺度を開発することである。平成28年度までに、呼吸困難感に関連する先行研究、既存尺度、概念分析の結果等の内容に基づき抽出した身体面への影響、心理面への影響、社会面への影響など各側面のカテゴリに分類した尺度項目案のアイテムプールを作成した。次に、アイテムプールを概観し、重複して抽出された内容やがん患者特有の内容を重要視して抜粋したの質問項目案を作成した。この質問項目案に対しがん医療およびがん看護領域の専門家よりスーパーバイズを受け、一致率の算出と研究者間の検討により削除項目や修正項目を決定し、暫定版尺度を完成させた。 平成29年度は、この暫定版尺度と基本情報調査項目より構成される質問調査用紙を作成し、尺度の信頼性の検証を目的とした本調査を実施した。目標サンプル数を確保するため、複数の施設で質問紙の配布および回収と基本情報の収集を行った。これまでに目標サンプル数の約8割のデータ収集を終え、残りのサンプル数の確保に向け、引き続き調査を継続する予定である。また、暫定版尺度の作成過程については、2018年4月に開催された国際学会において発表した。今後は、必要サンプル数が確保でき次第、統計分析の過程を経て尺度の信頼性・妥当性を検証する計画である。
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