研究課題/領域番号 |
24792452
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研究機関 | 新潟県立看護大学 |
研究代表者 |
渡邉 千春 新潟県立看護大学, 看護学部, 助教 (50613428)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 終末期がん患者 / 輸液療法 |
研究概要 |
終末期がん患者の輸液療法に対する看護の概観を知るため、文献レビューを行い、日本がん看護学会にて発表した。研究の内容としては、【終末期に合わせた適切な輸液療法の評価・検討】【終末期に適切な輸液療法・栄養管理を行うためのツール開発】【輸液療法に伴う溢水症状の影響と関連】【終末期の輸液療法に対する患者の意識・要望】【在宅緩和ケアに移行する上での輸液療法】が挙げられた。これらの中で、看護師が行った研究は、【在宅緩和ケアに移行する上での輸液療法】が主であった。輸液療法の傾向としては、平均輸液量の減少や高カロリー輸液の中止、皮下投与の選択の傾向がみられていることが明らかとなった。また、一般病院と緩和ケアを行っている病院でも差があることや、輸液に関する考え方についても医療者にばらつきがあることも明らかとなった。これには、予後予測や悪液質の状態を評価することの困難さが背景として存在していると考えられる。また、終末期の患者を栄養管理の対象としない看護師の認識についても課題として挙げられていた。 これらの結果から、終末期がん患者に対する輸液療法に関して看護の実際についても様々な課題が存在することが予測されるため、実態調査を行うこととし計画を一部変更した。対象は、A県内のがん連携診療拠点病院の病棟看護師と緩和ケア病棟看護師であり、終末期がん患者の輸液療法に関する観察・アセスメント、看護の実際を自記式質問紙調査法で行う予定である。また、文献レビューから、予後予測ツールの活用や栄養サポートチームの介入の視点の有無等からも、終末期がん患者の輸液療法における看護の実態を明らかにしていく予定である。倫理審査については承認されており、最終的な対象施設の確定後、実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は研究目的1)として「終末期がん患者・家族の輸液療法に対する意思決定支援について看護師の認識と実践を明らかにする」を挙げていた。本来の予定としては、文献レビュー後、終末期がん患者の看護に対してがん連携診療拠点病院に勤務している経験年数3年以上の看護師を選出し、輸液療法の意思決定支援に関する看護をテーマとしてフォーカスグループインタビューを行う予定であった。だが、文献レビューの結果、終末期がん患者の輸液療法に対する看護の実際が在宅中心静脈に関する指導のみであった。また、「終末期がん患者を栄養管理の対象としない看護師の認識」や「病院に限らず、全体的に看護師は終末期の患者への輸液量の制限をした方がよいと認識しているにも関わらず、緩和ケア病棟と一般病院等で輸液量に差があること」が課題として挙げられていた。そのため、終末期がん患者・家族への輸液療法に関する看護の実際について、意思決定だけでなく様々な課題が生じていることが予測された。これらの実態を把握しないまま、質的研究を行ったとしても、得られたデータの本来の意味を損なう可能性があると判断し、大規模な実態調査を追加して行うこととした。実態調査の追加に伴う、研究計画の追加や修正に時間を要したが、所属施設の倫理審査委員会の承認はすでに得ており、対象施設の内諾も得ている段階である。看護の実践の中には意思決定支援も重要な要素として挙げられているため、終末期がん患者への輸液療法そのものに関する認識・実践はもちろん、意思決定支援という側面の認識・実践についても明らかになると考えている。追加した実際調査を行った後、フォーカスグループインタビューを 用いた質的研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
予定している終末期がん患者・家族の輸液療法に関する実態調査の進捗状況として、所属施設の倫理審査委員会の承認を得て、対象施設の内諾を得ているところである。対象施設はA県内のがん連携診療拠点病院9施設(予定)の病棟看護師、特定非営利活動法人日本ホスピス協会の正会員として登録されている4施設(予定)の病棟看護師を対象としている。対象施設の正式な承認後、6月中には自記式質問紙の配布・回収を行う予定である。分析に関しては、7月~8月に行う予定である。配布予定数は1000名以上となることが予測されるため、配布・回収、データの収集に関しては、必要時業者に依頼し、効率化を図る。また、意思決定支援に焦点を当てた質的研究については、自記式質問紙調査の依頼の段階でも、参加・協力が可能であるか打診をし、質的研究にスムーズに移行できるようにする。予定としては、10月には、正式な研究依頼を行い、11~12月には実施できるようにする。また、この分析の段階では、研究者が所属する上越がんプロジェクト(JCAP)を通して、がん看護専門看護師、認定看護師、がん看護に経験豊富な看護師や教員を協力者として、依頼してある。 また、研究目的「2)終末期がん患者・家族への輸液療法に対する意思決定プロセスを明らかにする」については、協力が得られるがん連携診療拠点病院の消化器系病棟を 対象に参加観察法と半構成的面接法を実施する予定である。これに関しても、A県内のがん看護専門看護師3名の協力を得ることが予定されている。実態調査が追加されたことで実施に遅れが生じているが、次年度中には、研究依頼でき、取り組めるよう勧めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
大規模な実態調査を行うに当たり、対象施設に配布数を確認後、自記式質問紙の印刷と作成を行う。それに当たり、用紙・封筒・インク類等を購入する。また、回収に当たっては、回答・回収をもって同意したものとみなすという点から、自由意思が尊重されるように料金受取人払いの制度を活用するため、それに伴う料金が必要となる。料金受取人払いに伴って、封筒の印刷もあらかじめ書式が規定されているため、封筒の印刷に関しては、専門の印刷業者に依頼する。現在の段階で、配布予定枚数は1000枚前後となることが予測される。また、今回は、時間の負担を軽減するためにvisual analog scale(VAS)を用いていることから、回収後のデータ入力に相当の時間を要すことが予測されている。そのため、データ入力に関しては、専門業者に依頼する予定である。業者の選定に当たっては、見積もりを行い、比較・検討した上で実施する。また、分析にあたっては、多変量の解析を必要とすることも考えられるため、統計ソフトSPSSの購入についても検討している。 フォーカスグループインタビューを用いた質的研究においては、インタビューの録音等に使用する機器(ICレコーダー)は、所属施設にあるものを使用するが、会場の準備、観察者への謝礼、インタビュー参加者の交通費や謝礼を負担する。 学会参加としては、実態調査に関して、日本がん看護学会(新潟)、日本緩和医療学会(横浜)、国際学会にて発表予定である。
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