最終年度は、終末期がん患者への輸液療法の実態を明らかにするため、A県内のがん診療連携拠点病院7施設の一般病棟に勤務する看護師、特定非営利活動法人日本ホスピス協会の正会員として登録されている3施設の緩和ケア病棟に勤務する看護師の計346名(有効回答率34.3%)を対象とした調査を行った。対象者の平均年齢は、36.5±9.4才、経験年数は14.4±9.1年、がん看護経験年数は8.2±6.9年であった。終末期がん患者に行われている輸液の背景として輸液量が1000ml未満である割合(%)は、緩和ケア病棟91.2%、呼吸器64.3%、腎・泌尿器50.9%、消化器43.7%、乳腺・婦人科39%、血液25%であった。また、終末期輸液治療のガイドラインの認識について有と答えた看護師は、全体の22.8%(79名)であり、無しは77.2%(267名)であった。緩和ケアサポートチームが終末期がん患者の輸液療法に介入したことがある割合は47.4%(136名)、栄養サポートチームは 40.7%(125名)であった。看護師の観察・アセスメントの項目について、一般病棟では、「腹水」、「悪心」、「嘔吐」、「消化管閉塞」(p<0.01)、「気道分泌」、「患者・家族の輸液療法に対する希望とその理由」、「輸液療法を行うことが患者の退院・自宅での生活のバリアとなっていないか」、「輸液療法に対する患者・家族の希望にずれ等の問題は起きていないか」、「患者の意思決定能力に問題はないか」(p<0.05)において病棟間で有意な差が見られた。看護においても、口腔ケアや体位変換といった日常的に 行われる援助について比較的多く行っていたが、心理的側面や倫理的問題に関連したケアの実施は少なかった。今後、積極的な栄養サポートチームの介入や教育活動等で輸液療法に対する心理的側面、生活面、倫理的問題への意識を高めていくことが重要である。
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