下咽頭がんは、手術療法に伴う構造的・機能的変化によって、摂食嚥下障害を引き起こす。しかし、訓練によって代償的な機能回復を期待できることから、術後早期に適切な機能訓練を始めることが重要である。遊離移植皮弁が生着し、創部が安定する術後7日目頃になると、嚥下造影が実施可能となるが、看護師はこれ以前からケアを提供する必要がある。一方、手術による下咽頭の構造的・機能的変化を観察することは難しく、炎症反応による創部浮腫の経日的変化が、看護師にとってのアセスメントを難しくさせている。また、看護チームとして複数の看護師がケアを提供するため、当該領域の経験が浅い看護師であっても、術後の摂食嚥下機能をアセスメントできるツールが求められる。本研究は、そのツールとして下咽頭がんの術式から摂食嚥下障害の状況を特定するまでのアセスメントのプロセスを可視化するアルゴリズムを開発することを目的とした。 平成24年度は、頭頸部外科関連の書籍・文献等を精選して下咽頭がんの術式から摂食嚥下障害の状況をナビゲートするアルゴリズム案を作成した。研究参加の同意の得られた頭頸部外科領域の臨床経験を有する摂食・嚥下障害看護認定看護師24名に対し郵送法にてその内容妥当性の評価を依頼した。その結果をもとにアルゴリズム案を修正し、確定した。 平成25年度以降は確定したアルゴリズム案の臨床での実施可能性を検証する予定であったが、前回の研究課題である「中咽頭がん術後の摂食嚥下障害のアセスメントに関するアルゴリズムの開発」が未公刊のため、実施を予定していた施設の倫理審査委員会の承認を得ることができなかった。当該論文は平成27年4月に公刊されたため、本研究計画は、研究実施予定施設の倫理審査委員会の承認を得た後再開する予定である。
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