研究実績の概要 |
予備研究として、外来通院中の安定期慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者10名を対象に、栄養障害の程度や食生活の実態について明らかにすることを目的として調査を行った。その結果、10名中6名に栄養障害があり、筋タンパク量の減少がみられたこと、栄養障害のある患者の半数は摂取総カロリーが必要エネルギー量を下回っていたこと、高度なやせのみられる患者のPFC比はC比が高くF比が低いことが明らかになった。栄養障害があっても食事に伴う症状のみられない患者は、COPD患者特有の食事についての知識は少なく、栄養指導を受けた経験もなかった。疾病早期から病態と栄養に関する知識を得て、栄養障害を防ぐための食生活へ行動変容できることを目指した患者教育の必要性が示された。 予備研究の結果を元に、外来に通院中の慢性呼吸器疾患をもつ患者およびその家族を対象に多職種による小集団栄養教育を行った。月1回60分×3回で、医師、看護師、管理栄養士、理学療法士が実施した。安定期にあるCOPD患者以外にも肺がん(術後)や非結核性抗酸菌症の患者など、常時6名~9名の参加があった。 第1回実施前・第3回終了後・終了後3ヶ月後に、身体測定と食事調査、質問紙調査を行い評価した。日本人の推定エネルギー必要量は、70歳以上の男性で1,850kcal/日、女性で1,450kcal/日である(身体活動レベルⅠ)。簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた食事調査の結果、摂取エネルギー量が低下したF氏以外は必要量を満たしていた。栄養状態を示す%IBW(%標準体重)では、80≦%IBW<90で軽度栄養障害、70≦%IBW<80で中等度、%IBW<70で高度と評価する。6名のうち、A氏とE氏が軽度栄養障害と評価された。2名とも期間中に体重増加はみられなかったが、低下を防ぐことはできた。
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