研究概要 |
術後せん妄は,高齢者が手術をきっかけに発症する。術後せん妄の発生率は,領域により差はあるものの20~40%である。術後せん妄による影響について,ドレーン類の自己抜去等の必要な治療継続が困難となり生命リスクが高くなり,患者自身のQOL低下を招く恐れや治療の遷延,在院日数延長は,医療費増大を招き患者家族の経済的負担,DPC制度が導入されたことから病院経営を悪化させる恐れがある。術後せん妄発症患者の対応について看護師の97%は「困難がある」と回答しており「怒り」等の陰性感情を感じているとの報告もある。術後せん妄の対応は,早期発見・早期対応が重要であると言われているが,しかし実際の臨床現場で看護師が術後せん妄発症患者を早期発見は遅れている。 経験豊富な看護師は,直観的に術後せん妄発症予測を感じているが,術後せん妄発症予測に関しては看護師個々の経験知に依拠している現状がある。私自身も新人看護師の頃、夜間に術後せん妄を発症した患者の発見が遅れたことにより症状が重症化し看護する上で非常に困った経験がある。臨床看護師2,721名を対象に実施した術後せん妄発症同定率の先行研究では,実際に術後せん妄発症した患者を正しく術後せん妄発症と判断し同定できた看護師の割合は19%であったとの報告もあり看護師が術後せん妄発症をしているかどうかの正しい判断がされていない現状がある。 本研究の目的は以下の2つである。 1)術後せん妄発症前駆症状に関する国外・国内の先行文献とICUを含む外科病棟に勤務する経験豊富な看護師が考える術後せん妄発症につながる前駆症状についてのインタビューデータを基に作成し実施する質問紙票調査結果を統計学的に分析し術後せん妄アセスメントスケール原案を作成する。2)アセスメントスケールを作成すること。 全国の病院外科病棟に勤務する外科領域臨床経験10年以上の看護師を対象に質問紙票調査を行った。
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