研究実績の概要 |
本研究目的は術後せん妄スクリーニングツール開発に向けて術後せん妄発症前駆症状の構成因子を明らかにすることである. 本研究は,文献検討,面接調査,質問紙調査,質問紙調査に基づく術後せん妄前駆症状の抽出の順に実施した.調査Ⅰは先行文献より術後せん妄前駆症状を抽出した.調査Ⅱは看護師20名への面接調査より術後せん妄前駆症状を抽出した.調査Ⅰ・Ⅱより質問紙調査票を作成した.調査Ⅲは全国の国立大学医学部附属病院19病院に勤務する外科経験年数3年以上の看護師725名を対象に質問紙調査を実施した.相関分析,I-T相関分析,尖度と歪度の検証,因子分析を実施し因子構造を確認し因子累積寄与率を確認した.内容的妥当性の検証を行い,信頼性の検証は CronBach’sのα係数を算出した. 【結果・考察】調査Ⅰは先行研究文献12編より看護師が臨床で観察可能な術後せん妄前駆症状50項目を抽出した.調査Ⅱの面接調査より術後せん妄前駆症状82項目を抽出した.看護師側の説明に患者が納得していない様子など言語的・非言語的コミュニケーションを通して意思疎通の相違がみられることなどが明らかになった.看護師は患者とのコミュニケーションを図る中で,患者とのアイコンタクトが見られないことや表情の変化などの情報からアセスメントを行い,術後せん妄発症前駆症状と判断していることが明らかになった.調査Ⅰ,調査Ⅱから抽出した症状項目に基づき126項目からなる質問紙調査票を作成した.この質問紙調査票を使用し調査Ⅲの質問紙調査を実施した.因子分析の結果10因子40項目を抽出した.10因子は【妄想支配による精神的訴え】,【活動意欲の減退】,【意味のない行動】,【認識機能の低下】,【外見的興奮】,【理解力の違和感】,【恐怖・心配の訴え】,【失見当識】,【排尿に関する愁訴】,【睡眠覚醒サイクルの障害】であった.
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