研究課題/領域番号 |
24792474
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
森谷 利香 摂南大学, 看護学部, 講師 (20549381)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 難病 / 疲労 / 看護支援 / 多発性硬化症 / 補完代替療法 |
研究概要 |
本研究の目的は、多発性硬化症(Multiple Sclerosis; 以下MS)病者に特有の疲労に対して、新たな漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation; 以下PMR)を開発し介入すること、および他の代替補完療法(Complementary and Alternative Medicine: CAM)と組み合わせてその有効性を検証することにある。平成22年度は以下の項目で、主に次の介入研究に向けた準備としての活動を行ってきた。 【新プログラムの開発】MS病者に対して、運動のニーズや現状についてインタビューを行った。また、MS病者の相談窓口になっている当事者とディスカッションを行い、現状に沿った新たなPMRのプログラムの方向性を検討した。さらに、過去のPMRに関する図書と文献を収集し、それぞれのPMRの特徴や留意点などをレビューした。これらの知見と現行プログラムとの比較を行い、さらに健康運動指導士や体育の教員など有識者と新プログラムを考案した。 【疲労の評価方法の検討】疲労は客観的な評価が難しいため、多角的な評価が望ましい。これまでは唾液を採取し、ストレスを示すコルチゾールや分泌型IgAを測定していたが、これに加えて、次回以降では加速度脈波を測定する予定にしている。これに関連した文献を収集するなど準備を行った。 【アロマセラピーに関する文献レビュー】新たなPMRと共に、他のCAMを併用する予定にしている。そこでCAMの中でも一般的に使用されているアロマセラピーについて、症状別にどのような精油が、どのような方法で使用されているのかについて文献レビューを行った。この結果を踏まえて、次回以降の介入にアロマセラピーを取り入れる予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで森谷らは、MS病者の疲労に対して既存のPMRのプログラムを用いた効果の検証を行ってきた。この研究によって明らかになった課題を再度整理し、①下肢の項目が少ない、②首の項目は残す、③全体として25分間とする、④上肢や下肢の場合、両方を一度に運動することで、片方の麻痺を強く認識する場合があり別々に動かす方が良いが挙げられた。平成24年度はほぼ予定通り、4つの課題を踏まえた新たなプログラムを開発できた。そして新プログラムは下肢の項目が増えるなど、軽症者をターゲットとしている。新プログラムの開発過程においては、過去のPMRの図書や文献をレビューし、現行プログラムとの比較を行ったうえで、健康運動指導士などとディスカッションを重ねてきた。 平成25年度は新プログラムのパイロットスタディを実施する。プログラムによる病者の疲労への影響をより多角的に測定するために、自律神経を反映した「加速度脈波」を測定する装置を新たに購入し、準備を進めている。他の疲労を測定するパラメーターは、これまでの研究で用いてきたように心理的尺度としてSF-36、POMS、生化学的データとして唾液中アミラーゼ濃度、唾液中分泌型Ig-A、生理学的データとして収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍を予定し、準備を進めている。また、対象者の状況を的確にとらえ、かつ確実にリクルートできるように患者会との接点を持ち、本研究の趣旨や進捗を適宜伝えるとともに協力を要請している。 新プログラムのパイロットスタディの次の段階として、他のCAMとの併用があり、その準備としてアロマセラピーの文献レビューや研修会への参加も行ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は新プログラムのパイロットスタディを行う。本研究を推進するにあたって、次のような方策を考えている。 【患者会への協力要請】まず、対象者を募るために患者会への理解を求め、対象者をリクルートする。この時に、MSの重症度をEDSS3~4程度に限定するなど、プログラムの対象者を絞る。 【プログラムの実施と、介入できる有資格者の確保】パイロットスタディでの対象者は5名程度、介入期間は3か月を予定している。実施においては、森谷を中心に一人の対象者に一人の研究者が継続して介入を行う。介入プログラムは、前回の計画に基づき、正しく実施できるように最初の3日間は研究者と対象者が共に行い、その後も定期的に連絡をとって、適切な実施と安全の確保を図る。森谷以外に、難病の看護の経験があり、介入に参加できる有資格者(看護師)を1人雇用する。 【パイロットスタディの評価:専門家とのディスカッション】パイロットスタディの評価は、前項の通りに準備した内容を進めていく。パイロットスタディの全行程が終了した後に、結果を評価し、問題点などと併せて、MS病者の疲労に対する有効性を検討する。この際に、健康運動指導士、および神経内科専門医などに助言を求める。 【新プログラムのCD化】上記によって、確定した方法をCDとして作成する。CDは、PMRの趣旨や注意点を含む導入、呼吸方法、各項目の説明、消去動作を含む。またBGMとしてヒーリングミュージックをかけ、ナレーターもプロに依頼するなど、研究者が関与しなくても病者が実施できるような完成度のものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
新プログラムのパイロットスタディを行った後に、CDを作成するにあたり、次の項目で使用計画を考えている。 【パイロットスタディ】介入を行う有資格者への人件費や、パソコンを購入する費用が必要である。また、交通費や、評価のための試料、測定の外注に費用が必要である。さらに対象者への謝金が必要となる。そして結果を受けて、新プログラムの有効性を検討する上で、図書や雑誌などの文献に費用が必要となる。 【結果の公表】結果を学術集会等で発表するための交通費や学会参加費が必要である。また、論文化する際には、ネイティヴチェックに費用がかかる。 【CD化】業者に依頼するため、費用が必要である。 【全般】他、全般にわたって、USBメモリや、ファイル、付箋などのPC周辺機器や文具が必要となる。
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