研究課題/領域番号 |
24792474
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
森谷 利香 摂南大学, 看護学部, 講師 (20549381)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 疲労 / 漸進的筋弛緩法 / 看護 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多発性硬化症(Multiple Sclerosis; 以下MS)病者に特有の疲労に対して、新たな漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation; 以下PMR)を開発し、介入・評価することにある。平成26年度は以下について、研究活動を行った。 【4人の対象者へのパイロットスタディの完了】新たなPMRのCDを用いて3か月の介入と評価を行った。この目的は、新たなPMRのプログラムの安全性の確認である。患者支援団体を通じて募った。3か月の間に、2週間の休止期間を設け、その影響を考察する単一対象研究デザインである。また、疲労はその機序が明らかでないため多側面からの評価が望ましいとされる。そこで、介入における評価は、主観的疲労、心理的評価(POMS、SF-8)以外に、生化学的側面として唾液中Ig-A、唾液中アミラーゼ濃度のほか、自律神経の測定、および日誌として自由な感想の記載を求めた。評価のタイミングは、介入開始前、15日目、35日目、49日目(中断)、64日目(再開)、84日目である。 【他の代替補完療法との併用の検討】新たなPMRでは呼吸法も取り入れ、深呼吸によって、リラクゼーション効果を得ることを狙った。上記のパイロットスタディから、この効果を今後分析していく。 さらに代替補完療法の中でも一般的に使用されているアロマセラピーについて、症状別にどのような精油が、どのような方法で使用されているのかについて49件の文献を対象とした文献レビューを行った。その結果、機序が明確ではない症状に対してアロマセラピーが試みられていること、及び、ラベンダーやオレンジ・スイートが高頻度で使用されていた。ただし、精油種類は対象者の嗜好を尊重する方が好ましい効果を得られることなどが明らかになった。これらを踏まえて、今後のアロマセラピーの活用について検討を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、対象者に3か月継続して研究に参加できるタイミングを計っているため、予定通り進まなかった。またいったん同意を得た対象者が、家族の介護のためにキャンセルが発生したことも、遅れの要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
【新たなPMRの効果の検証】新たなPMRのパイロットスタディのパイロットスタディが安全に完了したため、対象者を増やし、準実験的研究デザインによる介入を開始する。患者支援団体を通じて広く対象を募り、郵送によってCDおよびオリエンテーション資料を送り、6か月の実施を依頼する。評価は4時点で、心理的側面、および日誌を予定している。対象群を設定し、これらの評価結果を比較する予定である。また、これまでの結果から、PMRによって疲労が減少する対象とそうでない対象、そしてQOLが上昇する対象とそうでない対象に分かれるため、効果の有無に影響する要因を検討する。具体的には、PMRはストレスの認知と筋緊張の連鎖を断ち切るという考え方に基づいているため、ストレスの要因や、それと疲労との関連性、あるいは病態や治療の別、他の対処方法を既に用いているかを検討する予定である。 PMRに関する研究全般から、介入期間が短いことや対象者が少ないこと、対照群の設定がないことなどが課題であるため、よりエビデンスの高い研究結果を得るために、介入方法を慎重に検討する。 【今後の推進方策】これらの計画を円滑に進めるために、現在協力を得ている難病看護の経験が豊かな看護師との連携を継続し、定期的に方針を確認し合う機会を持つ。さらに、関連文献を精読し、研究の方向性を修正、補足する。特に、リラクゼーションに関する看護技術を取り扱う文献を確認し、その方法や評価の動向を参考にすることが重要と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象者への不利益が生じないことを優先し、現在、研究の進捗が遅れている。このため必要経費を使いきれていない。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の項目に経費が必要と考えている。 ・CD作成費(複製およびラベル作成)・パソコン(研究協力者使用分)・郵送費(依頼に加え、対象者には評価のために少なくとも4回の往復のやり取りが必要。また対照群にも同様に必要である)・評価のための尺度使用料・成果の発表・新たな評価方法に必要な費用の可能性(自律神経の状態を測定する、より簡便な機器があるため、検討を継続する)・成果の発表・研究協力者への謝金・対象者への謝金・研究成果の発表(学術集会への発表、ネイティブチェック・出張費(必要時、対象者への説明、対象者の主治医への説明、患者支援団体への説明および協力要請など)
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