本研究では、信念対立解明アプローチに基づく信念対立評価システムを開発するために、以下の研究を行った。 研究1では、信念対立の構成概念を整備したうえで、項目プールを作成し、表面妥当性と内容妥当性の検討を行った。 研究2では、信念対立評価システムの尺度構成を行うために、看護師1683名で項目分析、因子妥当性、構造的妥当性、仮説検証(弁別的妥当性、収束的妥当性)、併存的妥当性、重症度の検討を行い、次に緩和ケアチームで終末期患者に関わる看護師127名で同様の分析を行った。項目分析では多次元項目反応理論、因子妥当性では探索的カテゴリカル因子分析、構造的妥当性では確認的カテゴリカル因子分析、仮説検証では因子間相関の 平方と平均分散抽出値の比較、併存的妥当性ではJob Content Questionnaire (JCQ)との関連性、重症度では潜在ランク理論を用いた検討を行った。その結果、3因子(同職種間の信念対立、他職種間の信念対立、患者・家族と医療者の信念対立)14項目からなる信念対立評価システムが開発された。 最終年度の研究3では、研究2で開発された信念対立評価システムの再現性と一般化可能性を検討するために、研究2とは異なる対象者896名で妥当性と信頼性の検討を行った。他の尺度との関連性を示す併存的妥当性では、日本語版バーンアウト尺度、心理ストレス反応測定尺度を用いた。その結果、信念対立評価システムの3因子14項目の良好な妥当性と信頼性が明らかになった。また潜在ランク理論を使い、信念対立の重症度を算定できるようにした。 以上から、信念対立評価システムは終末期医療で働く看護師だけでなく、さまざまな領域で働く看護師および他の医療従事者(医師、作業療法士、理学療法士)の信念対立の状態も定量化できる尺度であることがわかった。
|