研究課題/領域番号 |
24792484
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山口 咲奈枝 山形大学, 医学部, 講師 (20431637)
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キーワード | 父親 / 育児 / 家事 / プログラム |
研究概要 |
本研究の目的は、行動変容の動機づけに有効なシーソーモデルを活用し、「動機づけを強化し、負担を軽減することで育児行動は促進される」という概念枠組みを基にした父親学級プログラムを開発することである。 平成25年度は、前年度に作成した父親学級プログラムを活用し、介入プロトコールを確立するために、パイロットスタディを行った。具体的には、地域の産科拠点病院に研究協力を依頼し、初めて子どもをもつ父親を対象として、ランダム化比較試験を行った。既存の指導プログラムは産前に実施されることが多いが、どの時期にプログラムを実施することが父親の育児行動の促進に効果的であるか、これまで検証されていなかった。そこでパイロットスタディは、本研究で作成したプログラムを産前に実施する産前介入群と産後(母子の入院中)に実施する産後介入群、対照群の3群に無作為に割り付け、父親の育児時間と家事時間を比較した。その結果、退院1か月後の時点で3群間の平日の家事時間に有意傾向がみられ、産後介入群の家事時間が多かったことや、産後介入群の育児・家事時間が退院1週間後よりも1か月後で有意に増加していたことから、産後に本研究プログラムを実施することで、父親の育児行動が促進されることが示唆された。パイロットスタディの結果から、リクルート方法やサンプルサイズの推定、介入時期や評価指標の妥当性の確認をすることができ、介入プロトコールを確立することができた。 本研究は、父親の育児行動を促進する父親学級プログラムとして実践の場で広く活用できる内容を目指している。本研究で開発したプログラムによって、父親の育児行動が促進されれば、父親母親双方の育児負担の軽減、仕事と生活の両立の実現や子どもの発達の促進につながる。さらに、子どもをもつことや妻の就業維持に良い影響を及ぼし、少子化社会の改善に寄与する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、父親の育児行動を促進するための父親学級プログラムを作成することを目的として研究を実施した。方法として、まず、地域の拠点病院や行政機関で両親学級に携わる者および母子看護学の教員に対し、研究協力を要請した。次に父親のニーズや父親学級の実態を踏まえ、シーソーモデルを活用したプログラム案について、研究協力者と検討した。平成25年度は、前年度に作成した父親学級プログラムを実施するパイロットスタディを行い、介入プロトコールを確立することを目的として研究を実施した。前年度に父親学級プログラム案を作成するにあたり研究協力を依頼した施設にパイロットスタディの実施協力を要請したため、意思疎通が円滑に図れた。また、パイロットスタディは妊娠中から産後1か月までの縦断研究であり、研究参加の同意を得てから最終評価までに約1年の期間が必要となるが、前年度からパイロットスタディの研究参加者を募集し、研究を進めることができた。そのため、本年度は、パイロットスタディを実施し、介入プロトコールを確立するという研究実施計画を滞りなく推進できた。さらに、年度内にパイロットスタディの結果を分析して、結果を公表することができた。パイロットスタディによって次年度に実施を計画している本試験のサンプルサイズを決定することができ、介入時期を決定することができた。また、介入方法の細かな修正をしてプログラムの実施マニュアルを作成することができた。このように、本年度パイロットスタディを実施し、結果をまとめられたことで、次年度にスムーズに本試験を実施することができる。したがって、本年度は研究実施計画を十分に達成していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26・27年度の研究実施計画は、無作為臨床試験を行い、父親学級プログラムの有効性を検証することを目的として研究を実施することである。本年度のパイロットスタディによって、介入方法、介入時期、サンプルサイズ、アウトカムに対して期待される介入の効果、生じる可能性のある副作用、対象者のリクルートやランダム化の方法を検証している。本試験の微細な変更としては、サンプル数の変更がある。パイロットスタディのアウトカムからサンプルサイズを算出した結果、必要なサンプル数は21名となった。研究実施計画作成時は、各群60名と見積もっていたため、サンプル数を変更することとした。次年度以降の本試験では、研究の途中で脱落する参加者がいることも想定し、各群26名を目安として研究参加の募集を行うことにした。また、本研究で開発する父親学級プログラムは少人数の集団指導を計画していた。しかし、実際にパイロットスタディを実施した際に、対象者の希望に沿って介入を実施したため、1回のプログラムの参加人数が1人になる場合もあった。そこで、作成した父親学級プログラムを見直し、個別に対応できる内容であることを確認した。サンプル数や介入時期が決定したことで、本試験の実施規模の目処が立ち、研究実施計画通りに1施設で無作為臨床試験を実施することができると判断した。また、パイロットスタディを実施した施設に引き続き本試験の協力を依頼し、承諾を得ている。現在、本試験を順調に開始できていることから、今後も研究実施計画通りに研究を進められると考える。
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