本研究は、母体・胎児集中治療室(以下、MFICU)に入院となったハイリスク妊婦の入院生活において安全性と快適性、入院生活の質に影響をおよぼす諸要因を当事者の視点で明らかにするとともに、MFICUに入院を必要とする妊婦のための包括的なケアプログラムを開発することを目的とした研究である。そのために、1)MFICU入院に自身の生活の質を決定づけている生活領域を明確化し、それらの領域の相対的な重み付け及びその満足度を自ら評価していく「生活の質の重要項目を直接的に重み付けする個人の生活の質評価法(SEIQoL-DW)]を用いた調査、2)入院生活の実態を把握するための面接調査、3)1)2)の結果を基にケアプログラム開発に向け助産師に対しフォーカスグループインタビューによる調査を実施し、分析を行った。MFICU入院妊婦20名、2グループ計10名の助産師を対象に調査を実施した。 主な研究成果として、妊婦が挙げた重要項目は「家族」、「胎児の成長・健康」、「食事」、「自由に動くこと」、「清潔」、「育児に向けた準備」「趣味」、「コミュニケーション」であった。本研究の目的である入院生活に影響をおよぼす諸要因を示すことができた。ケア提供者である助産師は、従来の妊娠継続、胎児・母体管理の支援に加え、入院生活におけるQOL向上を図るために当事者である妊婦が重要としている事柄を把握し、QOL評価を行い、ケアのポイントを見出していくことの必要性について検討を行った。個人的なQOL評価を用いることで助産師は、妊婦一人一人が重要としている事柄を把握することができ、オーダーメイドケアを実践することが可能となる。今後は、具体的な臨床実践モデルとして活用するためにさらなる研究が必要である。
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