平成26年度に,BPD患者がいる家族1家族と大学生がいる家族26家族に対して家族機能尺度である家族環境評価尺度(SFE)用いた質問紙調査を実施した.さらに,BPD患者がいる家族には,約120分の半構造化面接調査を実施した.BPD患者がいる家族の家族機能は大学生がいる家族と比較して低く,特に家族内外の関係性について,多大な困難を抱えている現状が明らかになった.これらより,BPD患者がいる家族への家族支援の必要性が示唆された.平成24年度から25年度に実施した文献検討からも,わが国でBPD患者がいる家族は家族機能が低い傾向にあり,その家族症候として,家族の逸脱現象の派生,家族内外の対人関係障害,家族システムストレスへの不適応,家族の拘束的ビリーフの存在,家族のセルフケア力の低下,家族インターフェイス膜の調整不全,家族の社会的孤立などが存在することが明らかになり,これらの家族に対して,家族の関係性の調整や家族役割の調整、家族の問題解決能力の強化といった家族支援が実施されていた.このように,家族支援は,実施されてはいるものの,BPD患者がいる家族への看護職者が実施する家族支援としては確立されてはおらず,その現状と課題を明らかにするために,BPD患者がいる家族への家族支援について,看護職者16名への半構造化面接調査を実施した.修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果,26の概念,7つのカテゴリー,1つのコアカテゴリーが生成された.コアカテゴリーとして抽出された《家族を支援しているという認識が十分にないまま実施される家族支援》という現状について,看護職者が家族を支援しているという認識を自覚できることが最重要課題であることが示唆された.以上の結果を統合し,BPD患者がいる家族に対する家族支援モデルが開発された.
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