研究課題/領域番号 |
24792505
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
伊達岡 五月(和田五月) 石川県立看護大学, 看護学部, 助教 (90509572)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 妊娠期からの虐待予防 / ペアレンティングプログラム / 妊娠中からの仲間作り / 妊娠中の不安 / 育児不安 / 育児困難 / 母親学級 / エンパワメント |
研究概要 |
本研究の目的は、育児困難や虐待の予防を目指し妊婦を対象に行うペアレンティングプログラム(以下、妊婦PP)の効果を評価することである。プログラムの運営は、カナダの子育てプログラム「Nobody’s Perfectプログラム」の枠組みを活用する。基本的な考え方として、参加者中心のアプローチ等が挙げられ、参加者に応じたプログラム内容、開催回数・時間等を考案・企画することになっている。 平成24年度は、妊婦PPの実施と評価を行った。研究方法は準実験型デザインで、介入群・対照群ともに同意が得られた妊婦を対象とした。介入群は「こんなままで親になれるの?」等の産後に育児困難・虐待のリスクがある妊婦がアクセスしやすいちらし文言で募集し、妊婦PP(5~10人のグループで1回2時間のセッションを週1回×4回)を実施した。対照群は医療機関等の母親学級(以下、MC)の参加者とし、「分娩・出産」等の予めテーマを決めた講義・演習型である。プログラムの評価は①両群ともプログラムの前後及び出産1ヶ月後にアンケート調査を実施し統計的に分析する、②介入群において、妊婦PPの4つのねらいが果たせているかを評価するために、プログラム中の参加者の言動とアンケートの自由記載の内容を質的に分析・カテゴリー化を行うこととしている。 平成24年度は介入群へ3クール、対照群へは数クール実施した。評価は分析途中であるが、結婚による引越しにて周りに知人のいない参加者もいたが、プログラム終了後も自分達で集まるグループもあり、妊婦PPのねらいの一つの妊娠中からの仲間作りが期待できるグループも見られた。また、妊娠中からその地域の支援者(保健師や助産師等)との顔つなぎができ、産後に困った時など母親の方からそこで知り合った支援者へS0Sを発してくるケースや、気分転換に支援者に会いに来る者もおり、産後のケアの継続に有意義だったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究目的は妊婦PPの効果を評価することであり、具体的には①プログラムの短期的・中期的効果の評価、②育児困難や虐待のリスク要因を持つ母親をチラシによって募集する方法の妥当性の検討、③妊婦PP参加者の産後の子育て状況の実態把握、及び同窓会プログラムの検討・実施、及びその効果の評価とする。 達成度がやや遅れている理由として、プログラムの評価の一つに、アンケートによる量的評価が遅れていることが挙げられる。プログラム前後及び産後1か月の3回アンケートを実施しているが、3回全てのアンケート回収が難しい状況である(特に対照群の産後のアンケート回収率が低い。研究前に産後のアンケート調査にも協力の同意を得ているが、産後1か月は疲労感も強く大変な時期と言われ、アンケートに協力している余裕が無い参加者も多いと考えられる)。また、対照群のアンケート協力者自体が少ない状況でもあり、両群を比較検討するためのデータ数が集まっていない状況であることも、研究の進行が遅れている原因の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
【平成26年度】1.対照群へのMCを継続しデータ収集を進める(できれば、介入群への妊婦PPも実施) 2.同窓会プログラム(グループの関係性の強化)にて、妊婦PP参加者の現在の子育て状況の実態を明らかにし、同窓会プログラムの効果を評価する 対象者は妊婦PPの経験者とし、プログラム終了の約半年~1年後を目安として、月1回×3回程度で同窓会プログラム(プログラム内容はNP及び妊婦PPに準ずる)を実施する(妊婦PP終了後から期間が経ちすぎると効果が軽減してしまう可能性が考えられるため、可能であれば研究者は育休中であるがプログラムは平成25年度中に1回は実施したい)。プログラムの評価は、参加者にプログラム前・後(後は、各回終了毎)でアンケート調査を実施する。アンケートの内容は、育児困難感を把握するために「子ども総研式・育児支援質問紙(ミレニアム版)(川井ら,1999)」、子育てにおける自己効力感を把握するために「TOPSE日本版(米田ら,2007)」等を検討している。また、プログラム中の参加者の言動を質的に分析・カテゴリー化を行い評価の一つとする。 【平成27年度】1.育児困難や虐待のリスク要因を持つ母親をチラシによって募集する方法の妥当性を検討する 対象者は、妊婦PP参加者でアンケート及び産後のインタビューの同意が得られた者とする(平成24~26年度に収集したデータを引き続き利用)。データ分析は、①質問紙調査の結果を先行研究の育児困難・虐待に悩む母親の結果(西村ら,2009)と比較し、参加者の傾向を把握する、②セッション中の言動を質的に分析・カテゴリー化した結果及び産後のインタビューを参考に、育児困難や虐待のリスク要因を持つ妊婦の熟練した支援者にスーパーバイズを受け検討する予定としている。 2.平成24年度~26年度分に得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う
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次年度の研究費の使用計画 |
研究者は平成24年12月末より産前産後の休暇又は育児休業によって研究を中断した状態であり、未使用額が生じた。研究を再開する際には、平成24年度中に行う予定であった対照群へのMC実施を継続し(できれば、介入群への妊婦PPも実施)、次年度の計画である同窓会プログラムの実施も行う予定であり、その際に研究費を使用していく。具体的には、プログラム実施における施設代・茶菓代・物品代、プログラムのファシリテーターへの謝礼、データ分析における人件費・旅費等を予定している。
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