本研究の目的は、子育てを支援する立場にある看護職の子育て支援者コンピテンシーを明らかにし、保護者を意図せず傷つけたり混乱させたりしないような子育て支援のあり方を検討することである。昨年度まで調査した保護者の心理過程や看護職に対する意見を元に、本年度は熟練した子育て支援を行っている看護職と医療保健・保育の従事者に対する半構造化面接の実施を計画し、インタビューガイドの作成・研究倫理委員会への申請を行った。インタビューの分析と先行文献の子育て支援者コンピテンシーを照らし合わせ、「安心できる関係をつくる」「保護者を信頼する」「代案を提案する」などのコンピテンシー案が生成された。活用できるコンピテンシーとなりうるか今後妥当性の検討等を継続予定である。一方、看護師による子育て支援については他の専門職と異なり、健康時ではなく健康障害時の関わりであることが多く、先行調査で子育て支援として十分に行われていると母親が実感できていない課題が挙がったため別途検討の必要性があると判断し、質問紙調査前の文献検討を行った。育児中の看護師への子育て支援の報告は2000年以前よりあったものの、看護師が行う子育て支援の報告は2010年以降徐々に増加したが、疾患を持つ患児やNICUフォローアップ・虐待対応事故の予防・ホームケア指導など医療ニーズの高い児の保護者に対する支援の論文・雑誌の特集記事等が多く、日常行う看護の中における子育ての支援については少なかった。今後、医療機関の看護師による子育て支援の実態調査を実施する予定であるが、看護師が日常の子育てに悩みを感じる親に対する身近な子育て支援者であり、日々の看護は重要な子育て支援であることを伝えていく必要があると考える。
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