研究課題/領域番号 |
24792521
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
田村 南海子 東京工科大学, 医療保健学部, 助手 (60613271)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 臓器提供 |
研究概要 |
今年度は、ドナー家族(以下、家族)が脳死下臓器提供の一連のプロセスにおいて、実際に体験した出来事とその心理的軌跡はどのようなものであるか、脳死下臓器提供後の家族の長期的な受けとめに影響を与える要因を明らかにすることを目的として研究を行った。 ライフストーリー法を参考に脳死下臓器提供を体験した4家族のうち、意思決定の役割を担った代表者1名ずつの研究参加者に、半構成的インタビューを行い得られたデータを分析した。結果より以下のことが明らかとなった。1.家族は脳死下臓器提供の一連のプロセスにおいて、さまざまな出来事により心理的揺れ動きを体験していた。2.家族は脳死状態の患者を死と認識することを契機とし、家族の死に際しての意味の探索をはじめ意味を生成する過程で臓器提供の意思決定を行っていた。3.脳死下臓器提供の意思決定に際し、家族はドナーの価値が明確である場合、ドナーの価値を優先し、ドナーの価値が明確でない場合、家族の価値に照らし合わせて意思決定を行っていた。ここで、家族の価値とドナーの価値が一致することは、家族がドナーの価値観を家族の内に包含し、臓器提供の意思決定を肯定的に受けとめることに影響する。一方、家族の価値とドナーの価値が一致しないまま意思決定を行っている場合、家族の心理的揺らぎが継続していた。4.家族が脳死下臓器提供のプロセスで見いだした家族の価値信念は、その後臓器提供のプロセスで家族が体験する出来事に対する心理的揺らぎの支えとなり、提供後の家族の心理にも影響を与えていた。5.脳死下臓器提供のプロセスで、医療者の介入は家族の意味生成に影響を及ぼし、その影響は提供後の家族の生き方にまで及んでいた。 以上の分析結果より、我が国の脳死下臓器提供における看護実践への示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目的であるドナー家族が脳死下臓器提供の一連のプロセスにおいて実際に体験した出来事とその心理的軌跡、脳死下臓器提供後の家族の長期的な受けとめに影響する要因について明らかにすることができた。 また、それらより我が国の脳死下臓器提供におけるドナー家族支援に向けた看護実践についての示唆を得ることができ、来年度の研究課題の達成に向けた結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に脳死下ドナー家族へインタビューを行い得られた結果をもとに、我が国の脳死下臓器提供におけるドナー家族支援に向け必要な看護援助についての考察を深める。それらと、既存の海外における脳死下ドナー家族支援についての教育プログラムが、我が国の脳死下臓器提供実施施設でどの程度実際に行われているか実態調査を行う。それとともに、家族支援のための看護実践の実施の有無に関連する要因について調査し検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定していたインビュー対象者が、首都圏でインタビューが可能だったこと、またインタビューと分析に時間を要し、学会参加が出来なかったことにより、国内旅費に繰越金が生じた。 平成25年度の使用計画について、以下に示す。 ①全国の脳死下臓器提供実施施設への質問紙調査を実施するため、質問紙の作成と印刷(8万円)②質問紙の郵送に関連する費用(8万円)②統計解析ソフトの購入(65万円)③学会発表および論文投稿のための学会参加費(5万円)④学会参加用旅費(10万円)⑤研究成果報告書の印刷(10万円)⑥研究についてのスーパーバイザーとの打ち合わせ旅費(8万円)⑥ドナー家族を対象とした追加インタビュー調査旅費(10万円)⑦統計分析,移植医療・救急看護に関する書籍の購入費(約10万円)
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