平成25年度までに、全国の脳死下臓器提供に関わった看護師を対象とし、研究代表者らの先行研究から明らかになった日本のドナー家族に必要な看護援助とヨーロッパの脳死下臓器提供病院教育プログラムで推奨されている看護援助計30項目について必要性の認識の度合いと看護実践の有無をアンケートで調査した。回収数は117であり回収率は50.8%であった。 平成26年度は調査の分析を行った。30項目中『看護師が臓器提供の選択肢を提示する』以外は、各看護援助について80%以上の看護師が必要性を高いと認識していた。一方で、必要性の認識は高かったが、実施率が70%未満の看護援助が30項目中19項目あった。これら19項目の看護援助について、実施の有無に関連する要因を分析した結果、「看護師が自分自身の家族と臓器提供について話し合ったことがある」が18項目で有意に関連していた。また、「脳死下臓器提供の看護経験数」が12項目、「脳死患者の看護経験数」が10項目で有意に関連していた。実施率が低かった項目のうち『医師による病状説明後、家族が患者の病状をどのように理解しているか直接家族に聞き確かめる』『面会時に家族が観察した患者の状態をどのように理解しているか家族に聞いて確かめる』『家族が医師から説明された病状と患者の現状をつなげて理解できているか家族に聞き確かめる』といった直接家族に聞き確認する項目は、脳死下臓器提供経験数・脳死患者経験数・心停止下臓器提供経験数が有意に関連していた。 これらのことから、脳死下ドナー家族に必要とされる看護援助の実施を促進するためには、看護師が自分自身の家族と臓器提供について話し合うことが影響することが示唆された。また、看護師が直接患者の家族に病状の認識を確認するといった看護実践には、重篤な患者と家族への看護の経験が影響することが示された。
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