研究課題/領域番号 |
24792527
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 近大姫路大学 |
研究代表者 |
美甘 祥子 近大姫路大学, 看護学部, 助教 (10613804)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 出生前診断 / 母体血清マーカー検査 / NIPT / 妊婦 / 不安 / 胎児感情 |
研究概要 |
国内外の母体血清マーカー検査(マーカー検査)や、遺伝看護に関する文献を分析した結果、胎児異常を診断された妊婦の心理過程や援助についての調査は行われていたが、マーカー検査で陰性と判定された妊婦の心理面に焦点をあてた調査は日本では見あたらなかった。そこで、マーカー検査で陰性と判定された褥婦が、妊娠中や産後に、児に対してどのような不安や対児感情を抱いていたかを明らかにすることを目的とし、マーカー検査で陰性と判定された褥婦を対象とした、質問紙調査および半構成的質問紙を用いた面接調査の研究計画書「母体血清マーカー検査後の妊婦の不安に関する研究」を作成した。7月に岡山大学大学院保健学研究科看護学分野倫理審査委会にて承認された。9月より、マーカー検査を行っている施設に研究協力の依頼をし、3施設から承諾を得ることができた。複数の施設で調査することで、より信頼性の高いデータを得ることができると考える。 また、無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)が臨床研究として2013年4月より開始されることとなり、妊婦の関心は高まっていた。マーカー検査もNIPTも、どちらも母体血を用い、胎児の染色体疾患の可能性を判定する非確定的検査であることから、NIPTを受ける妊婦の心理面への影響が懸念される。日本では、NIPTに関して妊婦に行った調査は見当たらなかった。そこで、妊婦がNIPTに関してどのような知識や考えを持っているのかを明らかにし妊婦への援助の示唆を得るために、質問紙調査を追加することとした。研究計画書「新しい出生前検査に対する妊婦の意識調査」を作成し、12月に岡山大学大学院保健学研究科看護学分野倫理審査委会にて承認され、2013年3月より、研究協力が得られた4施設で質問紙の配布を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「母体血清マーカー検査後の妊婦の不安に関する研究」では、協力の了承を得ていた病院の産婦人科が、医師の確保が難しくなったことを理由に、H24年3月に急に閉鎖が決まり、6月に閉鎖となった。そのため、倫理審査の承認が得られ、準備の整った9月より、総合病院を中心に研究協力の依頼を行った。しかし、NIPTが臨床試験として開始されることが報道され、出生前診断に慎重な意見を持つ傾向が強まっていたこともあり、医師の協力を得ることが難しかった。そこで、研究を実施する施設を、総合病院に限定せずに研究の協力が得られる医師がいる施設とし、現在3施設から研究協力の承諾を得ることができた。今後、月に2~3人のペースで質問紙調査および半構成的質問紙を用いた面接調査を行っていく予定であり、研究の遂行の遅れは取り戻していけると考える。また、研究を行う施設が変更となったこともあり、研究方法を再検討した。研究計画書では、1次、2次調査と段階を踏み調査を行う予定であったが、1回の調査のみで目的が達成されるように調査内容・方法を変更した。 NIPTは、研究計画書を提出した時点では、日本で導入されることが決まっていなかったために研究計画にはなかった。しかし、NIPTもマーカー検査も、母体血を用い胎児の染色体疾患の可能性を判定する非確定的検査であるために、妊婦の心理面の影響が懸念される。報道の影響もあり、妊婦の関心が高い。日本ではNIPTに関して妊婦に行った調査は見当たらないことから、妊婦がNIPTに関してどのような知識や考えを持っているのかを明らかにし、妊婦への援助の示唆を得るために、質問紙調査を追加することした。順調に質問紙を配布することができている。 これらより、研究目的の達成度は、「おおむね順調に進展している」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
「母体血清マーカー検査後の妊婦の不安に関する研究」では、5月より研究参加者への質問紙調査および半構成的質問紙を用いた面接調査を開始した。12月までに、研究の参加に同意の得られたマーカー検査を受けて陰性であった褥婦約10名と、マーカー検査を受けていない褥婦10名を対照とし調査を行う予定である。1月~2月に母性看護学を専門とする質的研究に精通している大学教員によるスーパーバイズを受けながらデータの解釈について検討を繰り返し、妥当性の確保を行う。3月以降、学会発表と論文投稿のための準備を行い、H26年度に、学会発表と論文投稿を行う予定である。最新の情報を得るために、出生前診断に関係する学会に聴講に行くことを予定している。 「新しい出生前検査に対する妊婦の意識調査」では、5月まで施設への研究協力の依頼を行い、6月末日まで質問紙を配布する予定である。回収率40%と想定し、質問紙を1200部配布することを目指す。得られたデータを分析し、7月に開催されるNIPTに関するシンポジウムにて結果を発表する予定である。11月に学会にて発表する予定である。12月以降、国内外の雑誌に論文投稿を行う準備をし、投稿を行っていく。H26年度の掲載を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「母体血清マーカー検査後の妊婦の不安に関する研究」に関しては、学会発表を行い、マーカー検査後の妊婦の看護についての示唆を広めていきたい。さらに、H 26~27年度の掲載を目指し論文投稿を行う。 「新しい出生前検査に対する妊婦の意識調査」に関しては、国内外の雑誌への論文投稿を行い、H26年度の掲載を目指す。 また、最新の情報を得るために、出生前診断に関係する学会に聴講や研修会に参加したいと考える。機会があれば、シンポジウムなどで、得られたデータをもとに、母体血清マーカー検査やNIPTに関しての看護援助について発信していきたい。
|