「母体血清マーカー検査後の妊婦の不安に関する研究」では、母体血清マーカー検査で陰性と判定された妊婦が、妊娠中や産後に、児に対してどのような不安や胎児感情を抱いているかを明らかにすることを目的とし、褥婦(母体血清マーカー検査を受け結果が陰性、今回の妊娠中に羊水染色体検査を受けていない、妊娠・分娩・産褥経過と新生児の経過に問題がない)に面接調査を行なった。多くの褥婦は、妊娠中に母体血清マーカー検査の結果を聞き、安心し満足していた。しかし、母体血清マーカー検査を受検したことに後悔の念を抱き続け、妊娠期間中に新たな胎児への不安が出現したが、誰に相談したら良いか分からなかったと語った褥婦がいた。これより、母体血清マーカー検査の結果が陰性であったとしても、結果説明後も継続的なフォローを行う必要のある妊婦がいることが明らかとなった。さらに、妊婦が母体血清マーカー検査終了後も、他の出生前検査や胎児の不安について気軽に相談できる窓口を設ける必要がある。 また、母体血清マーカー検査と同様に、母体血を用い胎児の染色体疾患の可能性を判定する非確定的検査である無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)も、妊婦の心理面への影響が懸念されることから、妊娠中の女性がNIPTに関してどのような知識や意識を持っているかを明らかにすることを目的に、「新しい出生前検査に対する妊婦の意識調査」として、妊婦(一般の産婦人科医院・病院において、妊婦健康診査を受診し、母児ともに医学的に問題のない)に質問紙調査を行った。NIPTの導入に賛成する日本人妊婦は高率であったが、それに関する知識は十分ではなかった。NIPTの検査を受けることを決めるときにも、NIPTの検査結果が陽性で合ったときも、心理的なサポートが必要である。妊婦が染色体異常をもつ子どもとの生活について具体的にイメージできるような体制作りが必要である。
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