研究実績の概要 |
平成27年度は、①高齢血液透析患者の通院困難感に関するインタビューデータの分析と論文執筆、②要介護透析患者の介護保険サービス利用の実態と通院のためのサービス費用の試算に関する調査、③質問紙の作成と配布準備、を実施した。成果は次のとおりである。 透析歴10年以上かつ65歳以上の血液透析患者15名への半構造的インタビュー分析の結果、次のことが明らかになった。通院困難の認識として、高齢透析患者は、[通院するうえでの支えの実感]を持ちながら、 [準備して臨むこと]と [通院継続のための要求]をしながら、【通院の体制を整えようとする】。しかし、 [通院継続の支障となる状況]は、 [通院継続に対するゆらぎ]を生じさせ、【通院継続がおびやかされると感じる】。さらに、通院継続の要因として、[準備して臨むこと]と[通院継続のための要求]のバランスを保ちながら[通院継続に対するゆらぎ]に対処できることがあげられた。これらの結果は論文として「高齢血液透析患者が通院困難の認識を持つ過程と通院継続のための要因」は投稿済で、現在査読中である。 要介護透析患者の介護保険サービス利用の実態と通院のためのサービス費用の試算の調査成果は次のとおりである。要介護透析患者は、非透析の要介護者と比較して訪問サービスと介護用具の購入および貸借の補助・自宅の改修などの設備備品系のサービスの利用が有意に高かった。さらに、要介護透析患者1人あたりの通院サービスの年間費用は、在宅療養を推進した場合(565,755円)は入院透析を推進した場合(426,194円)と比較して費用が高額になることが明らかになった。これらの結果は、「Dialysis patients’ utilization of health care services covered by long-term care insurance in Japan」としてThe Tohoku Journal of Experimental Medicine, 236(1), 2015に掲載が決定している。
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