研究課題/領域番号 |
24792543
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
坂井 郁恵 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10404815)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 精神看護 / 家族介護者 / 首尾一貫感覚 / 地域 |
研究概要 |
山梨県内の3医療機関と2地域家族会に研究協力を依頼し,精神障害者と同居している家族で在宅援助における中心的役割,あるいはキーパーソン的立場である家族介護者を対象に質問紙調査を実施した.また,対照群として地域で暮らす一般住民にも同様の質問紙調査を実施した.質問紙は,性別,年齢,精神障害者との続柄等であり,対照群では要介護者の有無等の属性を加えた.他にSOC-13日本語版尺度(SOC),成人用一般的Locus of Control尺度(LOC),情緒的支援ネットワーク尺度,精神的健康パターン診断検査(MHP)を使用した.質問紙調査協力者のうち,同意の得られた家族介護者には面接調査を実施した. 質問紙調査では,205名の家族介護者に調査用紙を配布し,133名から回答を得,そのうち129名(62.9%)の調査用紙を有効として分析対象とした.対照群は,県内2か所の施設で市民講座に参加した男女70名に調査用紙を配布し,そのうち46名(65.7%)から回答を得た.本研究では,SOCにおいて家族介護者群と対照群の間に有意な差は認められなかった.家族介護者群では,年齢とSOC合計得点並びに全ての下位尺度との間に相関が認められた.また,家族介護者群では,SOCとMHP両尺度の合計得点並びに全ての下位尺度との間に相関が認められた.SOCとLOC尺度間では,両群においてSOC合計得点並びに全ての下位尺度とLOC合計得点との間に相関が認められた.一方,情緒的支援ネットワーク尺度においては,一部の下位尺度との相関にとどまった.面接調査では,24名の家族介護者から協力を得た.24名中,女性が8割以上を占め,続柄は親が18名(75.0%)と最も多かった. 質問紙調査並びに面接調査において,実施計画での予定より多くの対象者から研究協力を得,在宅精神障害者の家族介護者がもつSOCの程度が明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画に沿う形で研究を実施することができている. 研究目的のうち,①在宅精神障害者の家族介護者がもつSOCの程度と,②家族介護者のSOCと,SOCに関連する要因(自分の力,他者の力,精神的健康度)との関連性については,データ収集や入力,分析を終え,考察を深める段階に移行した. 残りの研究目的③家族介護者のSOCの形成や強化に影響を与えたと考えられる具体的な生活体験の調査については,24名の家族介護者に個別面接を行い,データの収集を終えることができた.収集したデータは全て逐語録を作成し,現在分析を行っている段階である. 現在までの達成度として,対象者の確保やデータ収集,分析等において問題は生じておらず,順調に研究を進めることができていると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,質問紙調査ならびに個別面接調査において,データの収集は完了している.今後は,収集したデータの分析を進めるとともに,考察を深めていき,研究論文としてまとめる段階へと進めていく.そして,精神保健福祉を扱う学会にて研究成果を発表するとともに,精神医療や家族看護関連の学術雑誌へ研究成果を投稿し,社会に対し研究成果の発信を行なっていく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度において,研究が当初計画より早く進み,調査用紙の依頼・配布回収や,面接などに時間を費やしたため,予定していた情報収集のための旅費は一部の使用にとどまった. 25年度は,本研究の考察を深める上で有用な情報を得ることと成果発表を目的として国内外の学会や研究会へ積極的に参加する予定であり,また本調査への協力施設との内容確認や成果報告のための旅費を必要としている. また,国外学会での発表や雑誌投稿を計画しており,研究結果の発信を国外にも行っていく際の英文校正費を人件費として計算している,そして,研究成果をまとめるための報告書作成費を必要経費として考えている.その他,参考図書を購入するための設備備品費を必要とする.
|