研究課題/領域番号 |
24792547
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
五十嵐 久人 信州大学, 医学部, 准教授 (90381079)
|
キーワード | 非正規雇用 / メンタルヘルス / 職業性ストレス |
研究概要 |
平成25年度は前年度に実施したpre-testの結果を精査し,本調査に向けての課題や調査項目の精選を行った。その際、産業医や産業保健師に内容確認を依頼し,雇用者が戸惑い無く解答できるよう修正を行った。本調査では,産業医の協力を得て非正規雇用者を雇用している中小企業の紹介を得て,調査への協力の意思を示した企業を対象に調査を実施した。調査内容は,WHOQOL26,職業性ストレス簡易調査票(BJSQ),SOC(首尾一貫感覚に関する尺度)などで構成されている。集計の結果,WHOQOL26においては,身体的領域に関するスコアが男性雇用者で低い傾向にあった。雇用形態にかかわらず,疲労を感じていたり,生活の基礎となる休養の質が保たれていない可能性が示された。また,心理的領域においては,女性雇用者に比べ男性雇用者で低い傾向にあり,男性雇用者の方が精神的健康度が低い傾向にあった。正規雇用,非正規雇用の間の差は認められなかった。BJSQの結果から,女性雇用者で「仕事のストレス要因」「修飾要因」に関する項目で有意差が認められており,非正規雇用者よりも正規雇用者の方がストレス度が高い傾向にあった。男性雇用者では差は認められなかった。SOCのスコアにおいは女性雇用者より,男性雇用者の方が低い傾向にあった。また,正規雇用,非正規雇用で比較すると,男性雇用者において,非正規雇用者の方が低い傾向にあり,正規雇用者と比較して健康保持能力が低い可能性が示された。 また,中小企業の衛生管理者,産業医などから雇用者の健康度について聞き取りを行ったところ,雇用形態にかかわらず,ストレス度が高い状況にあると共に,生活習慣病なども併せ持った雇用者も多いが,保健指導を行う余裕はなく自己管理に任せざるを得ない状況であり,雇用者の健康管理には厳しい状況が続いているとのことであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は中小企業の雇用者を対象にアンケート調査を実施することができ,当初計画に準じた進行状況である。また,分析に必要なデータの収集は順調に進んでいる。しかし,調査協力企業ごとの都合により調査日・調査票回収日が異なった為,全データを使用した分析が不十分であり,非正規雇用者,正規雇用者の特徴や課題の抽出が十分ではない。しかし,分析については平成25年度の単年で終わるものではなく,雇用者の状況を詳細に読み解くには平成26年度もひき続き分析・検討が必要なものであり,本研究全体の進行状況については,大きな遅れは無く進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画に基づき,今後は企業からの視点で非正規雇用者へのメンタルヘルスおよび生活習慣病対策などの健康管理・支援をどのように実施・考えているかについて,企業の健康管理担当者や人材派遣を行う企業を対象にアンケート調査を実施し,課題の有無について検討を行う。また,平成25年度に実施した雇用者への調査結果について,ひき続き分析を継続し,雇用者の置かれている状況や課題について検討を行う。これら両者の結果を基に,非正規雇用者を中心とした健康支援モデルの検討を行うものとする。
|