本研究では在宅療養中の神経難病患者と介護サービス事業者が抱く在宅療養における不安や困難感,サービス提供の現状や要望を明らかにし,保健師による効果的かつ具体的な支援方法を検討することを目的として調査を実施した. 平成27年度に訪問看護師3名を対象に難病患者に関わる上での不安や困難感,負担感,在宅療養支援サービス提供の現状や課題,保健師との連携の有無や期待する支援等について半構成的な面接調査を行なったところ,訪問看護師の不安や困難感については,在宅療養での患者本人の希望と介護家族の思いのズレからくる家族の介護負担の調整や看護師自身の経験・知識不足からくるサービス提供の不安や不全感等が挙げられた. 負担感については,長期的な関わりの中で病状の進行を予測した支援の進め方やサービス提供者のコーディネート等を患者と家族両者の気持ちに配慮し続けなければならないことであった.難病患者の特徴として,身体症状が進行し不自由さが増す一方で,脳機能は研ぎ澄まされるかのように敏感になるため表面的な対応は不信感を招きかねないこと,症状が不規則に出現するためコントロールが難しいことが挙げられ,看護師はその対応に苦慮している様子があった. 在宅療養支援体制については,最近の国の制度変更に対して,サービス提供側も患者も情報や説明が不十分のため対応できていないこと,患者一人ひとり異なる病状や進行度,療養状況,ニーズへの支援に対応できないこと等があった.保健師との連携について,今回の看護師の対象者は保健師との直接的な関わりの経験が一切なく,患者の対象者も関わりがないことが分かった.行政や保健師から期待する支援としては,制度変更に関する情報提供や説明会の実施,介護サービス提供者の研修会や交流会,地域における難病患者数や特性等のデータ公表等が挙げられた.
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