最終年度は,行政保健師の役割を改めて整理するため,①A県内の行政保健師を対象としたフォーカス・グループ・インタビューと,②全国の保健師を対象としたワークショップを実施した。 まず,A県内の行政保健師対象のフォーカス・グループ・インタビューでは,地域包括ケアシステム構築に携わっている保健師20名を対象に,4グループに分かれて半構造化インタビューを行った。内容の中心は「保健師の役割」とし,分析はグラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いた。 その結果,「保健師の役割」として,「地域診断」と「住民力・地域力の把握と信頼」という2点が大切であることが明らかとなった。地域診断では,特に「わがまちの高齢化の特徴と課題」「地域の社会資源」「地区組織(愛育会、自治会等)の活動状況」「地域の生活上の課題」を把握することが重要であること,ソーシャル・キャピタル(以下,SC)の醸成においては「Keyとなる住民の協力」が不可欠で,「住民同士の活動を前提に住民の気持ちを引き出し助け合う気持ちを後押しする」ことや「住民の力を信じて関わる(住民の主体性に任せる)」こと等が,保健師の役割として大切であることが示唆された。保健師が考える枠組みやゴールに住民を当てはめるのでは無く,住民の声ときちんと向き合うこと,住民のもつ自助や共助の力を信じて関わることで,新たな住民とのつながりや住民組織の活動の活性化が図れるのではないかと考えられた。 この結果をもとに,まずは地域の実情を把握することから始めるため,実際に地域へ出向いて住民の考えを聴くことや地域ケア会議へ住民が参加できるような取り組みを,一部の市町村で始めている。第4回日本公衆衛生看護学会学術集会では,この報告を兼ねてワークショップを開催した。これまでの活動のプロセスや結果を振り返りながら,保健師の役割について参加者一人一人が改めて考える機会となった。
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