研究課題/領域番号 |
24792576
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
渕田 英津子 名古屋市立大学, 看護学部, 講師 (90315846)
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キーワード | 認知症高齢者 / BPSD(行動・心理症状) / 介護施設 / ケア指針 |
研究概要 |
本研究の目的は,「攻撃的行為・興奮」,「介護拒否」,「徘徊」の3種の「BPSDのケア指針(Ver.3)」と「活用マニュアル」を開発し,それらを活用したケアモデルを作成することである。 今年度は,「BPSDのケア指針(Ver.4)」と「活用マニュアル」の内容の精選と実行可能性を検討するため,名古屋市立大学看護学部倫理審査委員会の承認を得,認知症ケアに3年以上関わり,現在の施設に6ヶ月以上勤務している介護施設のケア職員12名を対象に2回に分けて,約90分のフォーカス・グループ・インタビューを実施した。分析は,インタビュー内容の逐語録作成後,「BPSDのケア指針(Ver.4)」と「活用マニュアル」別に「重要だが表現・内容が分かりにくい項目・内容」,「実施困難な項目・内容」,「必要でない項目・内容」に関連する言葉を抽出し,意味内容による類似性により検討を行った。 結果,「重要だが表現・内容が分かりにくい項目」7項目,「実施困難な項目」1項目が示され,表現の修正や実施可能な内容に変更をした。また,「必要でない項目」1項目があげられたが,必要性について意見が分かれたため,認知症ケアの専門家に判断を依頼することにした。さらに,「注目すべき視点や具体的ケア内容の追加が必要な項目」3項目,「新たに追加が必要な項目」1項目が示され,視点,ケア内容,項目の追加を行った。また,使用プロトコルと記録用紙については,分かりにくい表現,記載方法の明確化,形式の修正の必要性について意見が述べられ,修正を行った。 最終的に,複数の介護施設のケア職員にフォーカス・グループ・インタビューを実施したことで,介護施設で活用可能なA4版1項,32~37項目の「BPSDのケア指針(Ver5)」とA4版1項の使用プロトコルと段階的に使用可能な日々の記録用紙から成る「活用マニュアル」を作成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の施設に6ヶ月以上勤務している介護施設のケア職員12名を対象に2回のフォーカス・グループ・インタビューを実施し,質的に分析を行い,「BPSDのケア指針(Ver.5)」と使用プロトコルと段階的に使用可能な日々の記録用紙から成る「活用マニュアル」を作成した。また,「BPSDのケア指針(Ver.5)」と「活用マニュアル」の内容妥当性を判断するために,日本認知症学会認定の認知症専門医2名,老年専門看護師2名,老年看護研究者2名,日本認知症ケア学会認定の認知症ケア上級専門士2名に個別インタビューを実施した。その後,逐語録の作成,分析を実施する予定であったが,年度途中で領域の教員が退職した。その後,欠員のまま学部教育の質を下げずに講義・演習・実習を実施しなければならず,研究の時間が確保できない状況が現在も続いており,研究が遅れる要因となっている。そのため,学生が休みの期間に研究時間を確保するなど実施方法の工夫を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,「BPSDのケア指針(Ver.5)」と「活用マニュアル」の内容妥当性を判断するために,10名の認知症ケアの専門家に実施した個別インタビューの逐語録の作成と結果分析を行い,「BPSDのケア指針(Ver.5)」と「活用マニュアル」の再検討を行う。また,フォーカス・グループ・インタビュー参加者が所属し,内諾が取れている5つの介護施設において,「BPSDのケア指針(Ver.5)」と「活用マニュアル」の使用を実施し,ケアモデルを作成する。今回の研究では,BPSDのケア指針(Ver.5)と「活用マニュアル」の使用効果を明確にすることが目的でない。そのため,選定基準を満たし本人または身元引受人から同意が得られた認知症高齢者に対して,介護施設のケア職員の協力を得ながら丁寧にケアの実践をし,介護施設で実行可能かつ有用なケアモデルを検討する予定である。 当初の計画では,「BPSDのケア指針(Ver.5)」と「活用マニュアル」の内容妥当性の検討は,薬剤師を含めた10名の方に実施する予定であった。しかし,個別インタビューの内諾を得る段階で,薬の飲み合わせに関する助言はできるが認知症ケアに関する意見を述べることは難しいと回答があり,薬に関連することで必要時に助言をいただくことにした。そのため,フォーカス・グループ・インタビューは日本認知症学会認定の認知症専門医2名,老年看護専門看護師2名,老年看護研究者2名,日本認知症ケア学会認定の認知症ケア上級専門士2名の計8名に実施した。しかし,このことが本研究の目的達成に影響はないと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究補助者が大学院生であったため,領域の教員欠員に伴い,研究者が講義のある日の学部実習の補助をお願いすることにした。そのため,急遽,別の研究補助者を探すことができなかったため。 成果発表を予定している学会の開催が奈良であるため,その参加費・交通費と今年度の研究補助者の謝金に使用する。
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