今年度は,「BPSDのケア指針(Ver.5)」と「活用マニュアル」(以下ケアモデルとする)の内容妥当性の判断を目的に日本認知症学会認定の認知症専門医,老年専門看護師,老年看護研究者,日本認知症ケア学会認定の認知症ケア上級専門士,計8名の個別インタビューを分析した。結果,4名以上が修正が必要,5名以上が妥当でないと判断した項目や内容はなかった。しかし,日々の記録において,BPSDの出現の有無に関わらず記録をする重要性と,記入例を示す有効性が示唆された。そのため,実行可能性のフォーカスグループインタビューの参加者に意見を求め追加した。 次にケアモデルを実行可能性の検討のフォーカスグループに参加した職員が勤務する介護施設において,65歳以上,認知症高齢者の日常生活自立判定がⅠ以上,BPSDの出現が認められ本人と身元引受人から同意が得られた21名に4週間使用した。使用前後のBPSDをWilcoxonの符号付順位検定を用いて日本語版NPI-NH得点を比較検討した結果,介入後に有意に低下した(p<0.001)。また,継続・統一したケアによりBPSDの改善に繋がったという意見が述べられた。一方で,職員間に知識やケア方法に差があり,使用前の教育の必要性が示された。 最後に,ケアモデルを使用した職員14名に使用の実際,効果と課題,効果的な使用の工夫点や具体策についてフォーカスグループインタビューを実施した。結果,BPSDの要因を考え統一したケアを段階的に実施できることが示された。しかし,周知や実施期間,記載方法,利用者選定などの課題もあげられた。 以上のことから,「攻撃的行為・興奮」、「介護拒否」、「徘徊」の3種のBPSDのケア指針と活用マニュアルの開発はできたと推察される。しかし,それらを用いた効果的なケアモデルの提示には,使用した事例の詳細な分析と更なる事例の蓄積や内容の修正が課題である。
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