研究課題/領域番号 |
24792579
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山縣 恵美 京都府立医科大学, 医学部, 助教 (30570056)
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キーワード | 高齢者 / うつ / 体力 / 骨格筋量 |
研究概要 |
本研究は、高齢者のうつと骨格筋萎縮(筋細胞量)との関連を明らかにした上で、これに基づくうつ予防に有効なプログラムを作成し、その効果を検証することを目的としている。前年度のベースライン調査では、地域在住高齢者のうち、うつ傾向にある者はそうでない者に比較して、下肢筋力や、持久力、筋パワーが有意に低値を示し、骨格筋量も有意に低値を示したことを報告した。また、この結果を踏まえて、レジスタンストレーニングを中心とした、高齢者が自宅で実施可能なうつ予防介入プログラムを開発した。 今年度は、うつ傾向にある高齢者に対して、開発したプログラムを用いた教室型集団介入を実施した。対象者は、地域在住の自立高齢者でGDS(Geriatric Depression Scale)簡易版によりうつ傾向が認められた69名(うち分析対象者55名)であった(男性27名、女性28名)。プログラムの内容は週1回90分のレジスタンストレーニングを3ヶ月間実施した。また教室と同様のトレーニングを自宅でも実施するように指導し、参加者には日々の運動実施状況を日誌に記録してもらった。その結果、介入前後で参加者のGDS得点は有意に改善した(p<0.001)。また、55名中18名はうつ傾向から非うつ傾向へと改善していた。体力指標では等尺性随意最大膝伸展筋力、垂直跳び、チェアスタンド、ステッピング、ファンクショナルリーチ、速歩10m歩行時間、Timed Up and Goといった、体力要素の中でも筋力や筋パワー、敏捷性、平衡性、歩行能力を評価する項目で有意に向上していた(p<0.05)。また上肢筋細胞量および下肢筋細胞量についても、介入前に比べて介入後で有意に増加していた(p<0.05)。以上より、今回開発したレジスタンストレーニングを中心とした運動介入が、うつ予防に有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の今年度の計画は、開発したうつ予防プログラムの効果を教室型集団介入、および訪問型個別介入から検証することであった。現時点で、うつ傾向にある者への教室型集団介入を実施し、効果を明らかにしたものの、分析対象者が55名と少人数であった。加えて、訪問型個別介入では対象者が集まらない等が発生し、介入に至っていない。引き続き次年度に、教室型集団介入と訪問型個別介入を実施していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画は、引き続きうつ傾向にある高齢者を対象に、うつ予防支援プログラムの実施と効果の検証を行っていく。プログラムの介入は、研究フィールドである亀岡市の保健センターおよび地域包括支援センターと協働で行っていく。特に教室型集団介入の開催では、高齢者が通える距離内での実施が必要であるため、地区ごとの開催を検討する。また、高齢者のうつは閉じこもりとの関連も明らかになっていることから、訪問型個別介入については、うつ傾向にある高齢者だけでなく閉じこもり傾向にある高齢者も含めて対象者を確保していく。プログラムの効果検証については、うつ予防の視点だけでなく、運動機能向上や閉じこもり予防等の視点も踏まえて評価し、高齢者のうつ予防に有効なプログラムを提案する。介入結果は、随時まとめて国内外の関連学会での発表、および論文としてまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、うつ傾向にある高齢者への教室型集団介入および、訪問型個別介入を展開する予定であったが、69名を対象にした教室型集団介入の実施にしか至らなかったためである。 次年度は、引き続きさらに多くの対象者に対し教室型集団介入を展開するとともに、訪問型個別介入も実施する予定である。研究費は介入で発生する諸費(会場費、人件費、郵送案内費等)や、国内外での学会発表旅費等で使用する予定である。
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