本研究の目的は、認知症高齢者の自己決定を支える看護援助方法を構築することである。今年度は、介入の実施による認知症の人およびケアスタッフの変化を明らかにして、介入の有効性を検討した。 A介護老人保健施設に入所中の認知症の人10名に対して、ケアスタッフ14名による実践が行われ、以下の①~③の結果が得られた。①介入前後の比較では、認知症の人の「前頭葉機能」「精神機能(認知機能,感情機能)」「生活の質」が有意に改善した。ケアスタッフの意識の有意な変化はなかった。②介入前とフォローアップ後の比較では、認知症の人の「前頭葉機能」「生活の質」が有意に改善した。ケアスタッフの「道徳的感受性」が高まる傾向があった。③ケアスタッフの支援実施に関する意見の分析では、【自己決定支援を通して認知症の「人」への理解が深まる】【認知症の人との対話の大切さに気付く】などのカテゴリーが抽出され、認知症ケアへの意識の変化がみられる可能性が示された。 以上の結果より、渡辺が立案した自己決定を支える看護援助方法は、認知症の人の精神機能や生活の質を高める効果があるだけでなく、ケアスタッフの意識の変化も期待できる支援であることが示された。
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