本研究は、認知症高齢者の意思決定を支援するためのアプローチとして、認知症高齢者の意思決定能力をどのように評価することが可能であるのか、また、そうした評価方法によって認知症高齢者の意思決定能力の特徴がどのように描き出されるのかを検討することを目的としている。 本研究は、認知症高齢者との個別面談によってデータを収集するものであり、前年度(第3年度)から認知症高齢者と認知症ではない高齢者(対照群)への面接調査をすすめてきた。最終年度でもある今年度(第4年度)は、同一対象者に対して、半年間隔で複数回面接し、意思決定能力が認知症の進行やその他の影響を受けてどのように変化していくのかを検討した。前年度に実施した1回目の面接調査の対象者70人のうち、半年もしくは1年後に2回目の面接調査を実施した対象者は58人であった。さらに、そのうちの42人に対しては、半年間隔で3回実施した。対象者の減少は、入院や転居などが主な理由であった。調査では、認知症高齢者でも、認知機能を高い水準で維持していた者は意思決定に必要な各能力も維持していた。認知機能が低下した者は、意思決定に必要な情報を「理解する能力」が低下する傾向を示唆しているが、低下は一律ではないため影響要因を検討していく必要がある。また、中等度からやや重度の認知機能障害が生じていると思われる対象者では、面接結果(得点)が低くなるケースばかりではなく、維持したり高くなるケースもあった。このような対象者は、自身のコンディションや環境の変化に強く影響を受ける可能性があり、意思決定能力の評価では慎重な対応が必要となるため、今後さらに詳しい分析をすすめていく。本研究の申請当初計画では、評価スケールの作成までを目指していたが、臨床での試用と検討の機会が得られず到達できなかった。臨床で役立つデータを示すために、本成果を十分に分析して今後の課題を検討していく。
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