本年度は、研究補助期間最終年度にあたり、インタビュー調査の実施により統合失調症患者の看護師との対話場面における沈黙の意味の概念構築を目的とした。統合失調症患者へのインタビュー調査を研究協力の同意の得られた7名に実施した。語りの内容を逐語録におこし質的帰納的に分析を行った。分析の結果、統合失調患者の看護師との対話場面における沈黙の意味として「意思を表示するための沈黙」「思考や表現を模索している沈黙」「相手に会話の主導権を委ねる沈黙」「一歩踏み出せないための沈黙」「不安のための沈黙」「取り残された感覚の沈黙」「精神症状・薬の副作用による沈黙」「興味関心がないことによる沈黙」「良好な関係性による心地いい沈黙」「固定観念や関係性がないための居心地の悪い沈黙」といった10のカテゴリが抽出された。「意思表示の沈黙」に対して看護師はその意思を読み取り対応する必要がある。また、患者は沈黙の時間に「思考や表現を模索している」ことから看護師は、模索している場合は待つことが重要であることがわかった。「相手に状況を委ねていること」や「一歩踏み出せないための沈黙」は、患者自身の対人関係やコミュニケーションを苦手とする統合失調症患者の特性を反映したものであるといえ、これらには、患者の特性を尊重し、感情や考えを表現できるよう、また自信を持てるような関わりが必要である。さらに、「不安のための沈黙」や「取り残された感覚のための沈黙」は、対話場面の中で不安軽減を図るだけでなく、ここにいるという存在価値を含めた関わりの必要性を示唆している。一方で、沈黙であっても無関心である場合があることがわかった。最後に、看護師は信頼関係の構築を最優先し、患者の言う無の時間においても共にあることが許される存在、自我を脅かさない存在として、対話場面ではゆったりとした時間や居心地のいい空間を演出する必要性があることが示唆された。
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