研究目的は、1)認知症高齢者への漸進的筋弛緩法実施による生理・心理的反応について、短期的評価を行うことと、2)認知症高齢者への継続的な漸進的筋弛緩法介入によるBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia(以下BPSD)、ADL、免疫機能等の影響について長期的評価を行うこととした。対象者はグループホームに入所する認知症高齢者37名(介入群18名、対照群19名)であった。短期的評価では、収縮期血圧値が14日目、拡張期血圧値が7・14日目、脈拍数が初回、7・14日目、呼吸数が14日目で有意差がみられた。唾液アミラーゼ値は、初回、7・14日目において有意な減少がみられた。長期的評価では、Neuropsychiatric Inventory Nursing Home Version(以下NPI-NH)について、介入群において初回よりも30・90日後と有意な減少がみられ、測定時期と2群の間に交互作用がみられた。各項目得点では、興奮の30・90日後、不安の初回・90日後、30・90日後の間に有意な減少がみられた。また、無関心、易刺激性では測定時期と2群の間に交互作用がみられた。継続した実施によりNPI-NHが減少しており、ストレス反応を減弱させ、BPSD出現を抑制する効果があったと示唆された。中でも、不安や興奮においては有意な減少がみられており、実施による影響を受けやすかったことが明らかとなった。N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)の変化では、測定時期と2群の間に交互作用がみられた。各項目の評価点では、関心の初回・90日後、30・90日後の間に有意な増加がみられた。介入前後のN式老年者用日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)の評価点は、介入群において30・90日後の間において有意な増加がみられた。
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