研究概要 |
保健師現任教育において,ポートフォリオを活用したプリセプター制を導入するA市に着目し,プリセプター制導入の実態と課題を明らかにした。 A市のプリセプティ及びそのプリセプターを対象として,2012年8月に1回目,2013年3月に2回目の半構造化面接調査を実施した。半構造化面接調査の内容については,逐語録を縮約・表示し,質的に分析した。 1回目の調査では,ポートフォリオについて,プリセプティ及びプリセプターの両者は,記入や提出に伴う『負担感』や活用方法に関連する『困惑感』を抱いていることが明らかになった。プリセプター制についてプリセプティは,管理・指導に伴う『緊張感』,組織の期待に対する『不安感』を抱いており,プリセプターは自分がこれまでに受けてきた教育方法,あるいは自分が実施したいと考える教育方法との相違について『違和感』を抱いていること,その一方で,新たな取り組みの効果や指導者としての自己成長に対して『期待感』を抱いていることが明らかになった。 2回目の調査では,プリセプティはポートフォリオの活用が「自己の保健師としての能力や課題の明確化」へ,プリセプターは「指導者としての能力や課題の明確化」へつながると認識していることが明らかになった。また,ポートフォリオを介して両者は,「保健師活動の理念と事業の目的を確認(再確認)」し,「互いの性格や支援過程の特徴を理解」しながら,「効率的・効果的な指導方法・学習方法を模索」,「自己の支援技術を向上」させてきたことが明らかになった。特にプリセプターは,時間の経過とともに後輩の育成が自己の『使命』『成長の機会』と捉えるなど,プリセプター制に対する認識がポジティブに変化していた。今回の調査において,プリセプター制の機能には,教育ツールと組織体制が関与することが示唆された。
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