平成27年度は,新人保健師が自己成長感を獲得していくプロセスを明らかにすることを目的とした研究に取り組んだ。平成23年度及び平成24年度に実施した新人保健師(A市11名)に対する半構造的面接のデータを見直し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いてこれらを分析した。その結果,新人保健師が自己成長感を獲得するプロセスとは,≪自他低評価による自信喪失≫から≪開き直りと自分の殻破り≫,≪自己効力感に基づく行動化≫への3カテゴリーを経ていることが明らかになった。さらにこれらのプロセスは,≪心の拠り所の獲得≫,≪専門職意識の芽生え≫,≪経験の蓄積による技量の深化≫の3カテゴリーによって促進されていくことが明らかになった。 本研究においては,文献レビューや新人保健師及びプリセプターに対する継続的な調査により,新人保健師の自己成長感獲得の要因やプロセス,新人保健師に対するプリセプターの支援内容を見出すことができた。 新人保健師の職業継続の意思につながる“自己成長感獲得”を促進していくには,プリセプターによる【信頼しあえる関係性を築く】【仕事に対して安心感を与える】【社会人として成長を促す】【専門職としての成長を促す】【新人保健師教育体制を整える】等の支援が有効である。 上記結果に示す新人保健師の自己成長感獲得のプロセスに基づき,今後はプリセプター制と並行して,ジョブローテーションの導入や新人保健師の自己学習ツールとなるポートフォリオ等の開発が求められると考える。 保健師現任教育においては,新人保健師をサポートする組織体制を整えていくことが継続課題であり,今後は本研究結果を基盤として教育プログラムの開発を試みたい。
|