本研究は、訪問看護師を対象に、療養者の入浴の可否判断にどのような要因が関連するかを明らかにすることを目的とした。調査対象は、全国訪問看護事業協会の正会員である訪問看護事業所より系統抽出された500事業所に所属する訪問看護師1000名であった。2014年12月~2015年1月にかけて、郵送法による無記名・自記式質問紙調査を実施した。回収数は395部、回収率は39.5%であった。このうち、有効回答が得られた299名を分析対象とした。調査内容は、入浴援助を行うために療養者宅に訪問している事例を設定し、その事例の療養者に対し、6つの条件を組み合わせた仮想の状況下で入浴援助を行うか否かの判断を尋ねる質問10問を行った。6つの条件は、2013年度までに半構造化面接により得られた結果をもとに『リスクと効果の程度』、『療養者の入浴希望』、『介護力』、『介護者との関係性』、『訪問看護師の経験知』、『訪問指示書内容』の6属性とし、各属性に対して2水準を設定した。分析には、コンジョイント分析を用いた。コンジョイント分析は、回答者が何を相対的に重要であると考えたかを知ることができる分析方法である。コンジョイント分析の結果、訪問看護師が入浴援助の可否判断をする時の相対重要度は、『療養者の入浴希望』『介護力』『介護者との関係性』『訪問指示書内容』『訪問看護師の経験知』『リスクと効果の程度』の順であることが明らかとなった。訪問看護師経験が5年以上の看護師と経験が5年未満の看護師の相対重要度は、どちらも『療養者の入浴希望』が最も得点が高かった。5年以上経験がある看護師は『介護力』、『訪問指示書内容』の順に重要度の得点が高かったのに対し、5年未満の看護師は、『介護者との関係性』、『介護力』の順となった。経験年数で入浴可否判断の際に重要視している内容に差があることが示唆された。
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