研究概要 |
自発的な運動のタイミングを制御するメカニズムについて研究を行っている。申請者は、サルに一定の遅延の後に自発的なタイミングでゴールに目を向けることが要求される課題(Self-timed課題)と、運動の開始が課題内で指示される課題(Triggered課題)を訓練し、同課題を行っているときに運動準備期間に前頭葉背内側部を微小電気刺激することによって、人為的に自発運動のタイミングを操作できることを今年度に報告した(Kunimatsu & Tanaka, 2012)。本研究ではこれまでの成果をさらに発展させるべく、大脳基底核がタイミングの調節といった随意運動の制御にどのように関わっているのかを調べている。 大脳基底核には直接経路、間接経路といった複数の内部経路があり、それぞれの経路はドーパミンD1、D2受容体によって調節されていることが知られている。大脳基底核の入力部である尾状核にドーパミンD2受容体の拮抗薬を微量注入したところ、Triggered課題と比べてSelf-timed課題で大きく反応時間が短縮した。一方で、ドーパミンD1受容体の作動薬やドーパミン D1受容体の拮抗薬、またはドーパミンD2受容体の作動薬では一貫した結果は得られなかった。これらの結果は、ドーパミンD2受容体が関与している間接経路で自発的な運動のタイミングが調節されていること示している。 また注入実験に加え、単一ニューロンの細胞外記録を行っている。この実験ではself-timed課題に複数の遅延期間(300, 900, 2100ミリ秒)を加え、そのときの尾状核の神経活動を調べた(n = 38)。その結果、再現時間によって神経活動の上昇率と閾値に至るまでの時間が異なっていた。 本年度では1頭目からデータを取り終わるまでに至った。来年度は上記の結果をまとめて日本神経科学学会および北米神経科学学会で発表する予定である。
|